金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田総裁(26日、日銀本店)

歯止めのきかない円安にどう向き合うのか。3月にマイナス金利政策をはじめ異次元の金融緩和策の解除を決めたばかりの日銀が難題に直面している。利上げの機を探りつつ、円安が経済や物価に与える影響も注視してほしい。

26日開いた金融政策決定会合では、短期の市場金利を0〜0.1%程度とする現行政策の維持を決めた。賃金・物価情勢を見定めたいという判断は妥当だろう。

日銀は賃金上昇を伴う2%の物価上昇の定着を目標に掲げる。今回公表した2026年度までの新たな経済・物価シナリオでは「見通し期間後半には目標とおおむね整合的な水準で推移する」とうたい、目標達成に自信を示した。

日銀は一時的な要因を除いた「物価の実力」である基調的な物価上昇率はまだ2%を下回るとみる。植田和男総裁は記者会見で「見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と明言した。

24年度の物価上昇率は前回予想から0.4ポイント高い2.8%を見込んだ。当面は過去の輸入インフレの影響もあって2%超の上振れが続くが、その後は基調として2%に収束していく姿を描いた。

植田氏は円安の影響を巡り、足元の物価を押し上げていると認めたうえで、物価の基調には「今のところ大きな影響を与えているということではない」と指摘した。市場ではこうした発言を受けて円安が加速する場面があった。

最近の円安・ドル高は根強いインフレ圧力で米国の利下げ観測が後退している要素が大きい。日銀が円安阻止を目的に利上げを急ぐのは本末転倒だ。急激な金利上昇が景気の下振れを招きかねない。

一方で日銀は円安による物価高が賃上げに波及すれば、物価の基調を押し上げる可能性があるとみる。こうした点を含め、円安が経済や物価に与える影響を丹念に分析し、説明を尽くしてほしい。

日本経済に適切な政策金利の水準や、膨らんだ国債保有をどう減らしていくかを探る将来の政策の方向性を示す努力も、為替相場の安定につながるはずだ。

財務省は相場の急変に備え、円買い・ドル売りの為替介入に動く構えを示す。急変動を抑える努力は必要だが、時間稼ぎにすぎない。為替の安定に向けた抜本策は、あくまで輸出産業の再興をはじめとする日本経済の体質改善だ。

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