「TSUTAYA(ツタヤ)」などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と三井住友フィナンシャルグループ(FG)は22日、両社の「Tポイント」と「Vポイント」を統合し、名称を「Vポイント」に統一した新たなポイント事業を始める。通信大手が先行する「経済圏」競争に強力な対抗馬が出現することとなり、各陣営にはこれまで以上に顧客からの興味を引き付けるための高度な工夫が求められそうだ。
TポイントはCCCが平成15年に生んだ「老舗」経済圏だが、近年は後発の他陣営の経済圏に押され失速していた。一方のVポイントは利便性や知名度の低さを課題としており、利害の一致から統合が実現。これにより生まれる経済圏は計8600万人規模に上る。
特徴は従来のTポイント加盟店に加え、クレジットカードの国際ブランド「VISA(ビザ)」の加盟店でもポイントがたまるという利便性の高さだ。三井住友FGの金融サービス「Olive(オリーブ)」と連携した戦略も展開する。
各陣営で戦略加速
通信大手の各陣営も囲い込み戦略を加速。KDDIは2月にコンビニ大手ローソンの株式を取得し、共通のポイント「Ponta(ポンタ)」の戦略強化を模索する。
「dポイント」を運営するNTTドコモは今月、インターネット通販大手のアマゾンジャパンと協業し、アマゾンでの買い物でdポイントをためたり使ったりできるようにした。
スマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」も、グループ内の金融サービスとの連携を強化する。
差別化にハードル
ただ、各陣営のポイント戦略は成熟期を迎えている。高い還元率や金融サービスとの連携は既に新鮮みがなく、既存戦略の延長線では「差別化が図れなくなった」(業界関係者)との声もある。
求められるのが、顧客の利便性を高めることでサービスを日常的に使ってもらう取り組みだ。楽天グループは今月18日、スマートフォン決済「楽天ペイ」アプリにポイントカード機能を統合すると発表。担当者は「一つのアプリで使ってもらったほうが利用頻度が増える」と狙いを説明する。(根本和哉)
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経済圏争いは「技」の時代へ
野村総合研究所・冨田勝己氏
新Vポイント誕生の背景には、新たなパートナーを欲していたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と、Vポイント加盟店やユーザーを増やしたい三井住友フィナンシャルグループ(FG)の利害の一致がある。VISAでの決済でもポイントがたまるなど利便性は高く、訴求力は大きい。
三井住友FGが今後一定規模の原資を出すのなら、(弱点だった)会員に提供できるポイント発行額などのインセンティブ(動機付け)は他陣営に追いつくことができそうだ。そうなると、ポイント還元率の高さなどより「どれくらいの人と接点を持ち、使ってもらえるか」の方が重要になるため、各社はこの部分を強化しようと今後さまざまな施策を打つのではないか。経済圏争いは「力」から「技」の時代へと変わっていくだろう。
経済圏の強化は各陣営の販促活動につながっているため、今後も拡大が続くだろう。発行した企業の店舗でしか使えないような単独のポイントサービスは排除され、共通ポイントへの集約がより一層進む可能性が高い。(聞き手 根本和哉)
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