ピュー研究所が、米国でのChatGPTの利用に関する調査結果を発表した。このツールを仕事で使用したことのある人は昨年から急増しており、AIブームがいっときのものではないことを示す材料のひとつだと言える。

ChatGPTが2022年11月に公開されて以来、科学、ビジネス、メディア業界にいる多くの人が人工知能(AI)に夢中になっている。22年11月以降に手がけた自分の仕事をざっと振り返ると、わたしもその一員であることは明白だ。というのも、このサービスに夢中なほかの人たちと同様、大規模言語モデル(LLM)が劇的な変革をもたらす最先端の技術だと考えているからだ。もしかしたら生成AIの生み出すユーフォリアに陶酔しているだけかもしれないが、目と鼻の先にあるAIの進歩は人々が働く方法だけでなく、ビジネスの構造、そして究極的には人類の行く末を変えるものだとわたしは考えている。

誰もがこの意見に同意しているわけではなく、ここ数カ月で反発も起きている。AIは過大評価され、大げさに宣伝されていると一部の専門家は主張しているのだ。自称AI批評家のゲイリー・マーカスは先日、LLMのブームについて「人気がある程度尻すぼみになっても驚かない」と話していた。AIはいま「幻滅の谷」に直面していると主張する人もいる。

5人に1人がChatGPTを仕事に利用

大きな疑問を解消するものではないが、米国、ひいては全世界がAIとLLMの到来をどのように見ているかを部分的に示すデータが今週手に入った。ピュー研究所が24年2月7日からの11日間にわたって実施した、ChatGPTの使用、評価、信頼に関する調査結果が発表されたのだ。同社はインターネット、ソーシャルメディア、モバイルデバイスが台頭したときにも同様の調査を実施している。

調査結果の数字を一見すると、LLMを巡る議論をほとんどの人は気にしていないし、一部の人たちによる見解の不一致に過ぎないことを示しているように受け取れる。米国人の3分の1はChatGPTについて聞いたことがなく、ChatGPTを使用した経験がある人は全体の4分の1弱だった。24年の選挙戦では公共の場に誤情報が氾濫するというAIにまつわるパニックに関する数字はどうだろう。すでに始まった大統領選挙についての情報を得るためにChatGPTを使用した米国人は、いまのところわずか2%に留まっている。

一方で全体を見ると、強力な技術が普及し始めていることが読み取れる。ピュー研究所の調査サンプルが全米の人たちを代表していると考えるなら、実際には数百万人もの人がChatGPTに親しんでいることになるのだ。

特に際立っている数字がある。エンターテインメントのためにChatGPTを使ったことがあると回答した人の割合は17%で、何か新しいことを学ぶためにChatGPTを試したことがあると回答した人たちの割合も同じだった。さらに成人の20%が仕事のためにChatGPTを使用したと回答していた。6カ月前に同じ調査が実施されたときの結果は12%であったことから、前回から3分の2も増えたことになる。

これまでの技術的変化との類似点

ピュー研究所でこの研究に関わっている研究アソシエイトのコリーン・マクレインに話を訊いた。この研究から見て取れる動きは、これまでのほかの大きな技術的変化と似ているようだという点でわたしたちは意見が一致した。 「インターネット、スマートフォン、ソーシャルメディアの利用に関する変化のグラフを見てみると、そのいくつかでは同じような上昇が見られます」と彼女は言う。ただし、伸びが止まった技術もあると付け加える。マクレインが言及した例は、利用者が大幅に増え、使わない人がほとんどいなくなったことで頭打ちになったものだった。

ChatGPTのビジネス利用が12%から20%に急上昇したことで注目すべき点は、人類はまだこうしたモデルを活用し始めたばかりだということだ。そしてChatGPTを完全に活用するためのツールは、まだ開発途上なのである。とはいえ、この状況も急速に変化している。

ChatGPTを開発したOpenAIはこうしたツールの開発に注力しており、AI大手のマイクロソフトとグーグルも提供サービスのすべてに会話型AIを組み込むべく、人員を再配置している最中だ。そしてSierraのような法人顧客のためのAIエージェントを構築しているスタートアップは、複数のモデルを活用してカスタマイズ可能な機能を提供している。

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