プロ野球・巨人の元オーナーで読売新聞グループ本社主筆の渡辺恒雄氏の訃報を受け、2004年の球界再編問題時の近鉄の監督だった梨田昌孝さんは19日、毎日新聞の取材に応じ「(04年に)ストまでやったのは、渡辺さんの発言が大きかった」と騒動当時を振り返った。
一連の騒動は6月、近鉄とオリックスの合併を検討していることが明らかになり、始まった。パ・リーグが5球団となり、7月のオーナー会議ではパ内で「もう一つの合併」話も浮上した。パが6から4球団になる形となり、1リーグ制も現実味を帯びる中、飛び出したのが渡辺氏の「たかが選手が」発言だった。
01年にパ制覇をしながら渦中の球団を率いていた梨田さんは、テレビで渡辺氏の発言を知った。「選手も通訳もBP(打撃投手)も仕事を失う。こんな、みんな苦しんでいるのにさ」と当時の思いを明かす。一方、この発言は労組日本プロ野球選手会の古田敦也会長(当時)が「オーナーに会いたい」と要望したことを受けてのことだった。選手会は最終的に9月、日本球界初のストライキを行う。
「ストまでしてね。あそこまでやったのは渡辺さんの発言が大きかった。経営者が『たかが選手』と軽視してるんかと。そういうところから動きが変わり、2リーグ制の維持へファンも味方に付いた」と梨田さん。結局「もう一つの合併」は頓挫し、近鉄はオリックスと合併したものの、楽天が新規参入したことで2リーグ制は維持された。
巨人とはリーグが異なるため、梨田さんが渡辺氏と顔を合わせる機会は少なく、話したこともなかったという。ただ、姿を見ると「(周囲を)近づけないような、がんとした威圧感、威厳を感じさせた。あの方(渡辺氏)は天国に召されても、必ず上から見ておられると思う。やっぱり、野球、好きやったと思うんだよ」と語った。【荻野公一】
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