多賀谷智子准教授

4月は新年度のスタートであり、出会いの季節です。入学式・入社式などのイベントもあり、何となくワクワクする気持ちが湧き出ておられるでしょうか? それとも、仲の良い友・気心の知れた仲間との別れを経験し、その心の傷がまだ癒えていなくて、次の出会いを煩わしく思う状態でしょうか?

そもそも、年度が変わるということは、多少なりとも何らかの変化があることから、不安や緊張を感じられている方もおられるかもしれません。

そういった不適応な状態をより適応的な状態にするために、どのようなアプローチをしていけばよいのか、という研究をしています。一見同じに見える不適応な状態でも、当事者側の要因、環境側の要因、そして、その両者の相互作用によってアプローチ方法は異なります。

実は、自分にとって良いことであっても、悪いことであっても、人は変化に対して何らかのストレスを感じます。そして、ストレスを感じた出来事をきっかけに身体はストレス反応を生じます。

ただ、このストレス反応の程度は人によって違います。同じ体験から生じるストレス反応であっても、ほとんど影響のない程度から重大なものまでその程度はさまざまです。

さらに、単発のストレスフルな出来事がいくつか重なることで、より重度のストレス反応を生じることも分かっております。例えば、家庭や職場の状況が芳しくなく、健康を損なっている状況において、4月の些細(ささい)な変化が引き金になり、強いストレス反応を生じるといったことです。

ご自身の現状を把握し、いくつかのライフイベントや身の回りの変化が重なっているならば、ストレス反応が生じやすい状態にあることを自覚して、ストレスフルな状況を回避したり、優先順位をつけて優先度の低い行動を後回しにするなどの調整をしたり、といった対処行動を試みてください。休息や気分転換もOK! ストレスフルな4月をうまく乗り切ってください。

私ごとですが、還暦を迎えてもなお、スキーに親しみ、毎年さまざまなシチュエーションでの雪や仲間との出合いを楽しんでおります。多大な影響を受けたスキーの恩師は「一度として同じ雪の状態はない、だからスキーは面白い! その瞬間、瞬間を楽しみなさい」と幾度となくスキーの面白さ、自然の奥深さを目を輝かせて語ってくれました。その恩師が先月あの世に旅立ちました。ぽっかりと穴が空いた別れの季節を経て、ストレス反応を自覚しながら、私なりの対処行動をとりつつ、今年も出会いの季節を迎えます。

多賀谷智子(たがや・ともこ) 兵庫教育大学大学院学校教育研究科修了。博士(人間文化学)。臨床心理士。公認心理師。小学校教諭、通級指導教室指導教諭を経て、2017年からびわこ成蹊スポーツ大学准教授。専門は学校心理学。

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