バレーボール女子のヴィアティン三重が26日、Vリーグの今季開幕戦を迎える。過去2シーズンはリーグ戦で大きく負け越したチームは参入3年目の今季に向けて従来の強化策にとらわれない独自の取り組みで底上げを目指してきた。
「クラブを三重に残すために強化してきた。今までとは違う結果が出るのではないかと楽しみ」。9月21日のVリーグ開幕前記者会見で椎葉誠・常務取締役は力強く語った。
参入初年度の2022~23年シーズンは2部で3勝17敗、2年目の昨季は3部で15戦全敗と苦しいシーズンが続いた。新しいシーズンに向けて、従来なら選手補強を考えるところで、ヴィアティンは違った。椎葉常務は「選手たちに戦う気持ちはある。だが、選手たちを引き出せる方法がうちにはなかった」とクラブのハード面の改善に力を入れることにした。
6月にSVリーグ男子のウルフドッグス名古屋と技術指導契約を締結した。男子チームのノウハウを取り入れるため、勝岡将斗さんを特別コーチに迎え、練習に励んできた。勝岡コーチはSNS(ネット交流サービス)で「両サイドのスピード感がある、サーブレシーブやディフェンスから速いテンポのバレー」を目指す考えを述べた。
7月には元日本代表の大山加奈さんが選手のメンタル面や引退後のキャリア形成をサポートする「プレイヤーデベロップメントマネージャー」に就任した。過去2シーズンはエグゼクティブアドバイザーを務めていた大山さんは「競技者としての人生も、一個人としての人生も、どちらもより充実したものになるよう、寄り添いながらサポートしていけたら」とコメント。選手をコート内外で支援する体制を整えた。
従来のような大型補強ではなく、環境作りを優先した。椎葉常務は「皆さんに応援してもらうには、三重にバレーボールを根付かせる必要がある。能力がある外国人選手を獲得しても意味はない。今の選手の才能を潰さないように強化しなければいけない」と狙いを語った。
バレーボール界は今年、大きな変化を迎えた。3部制だったVリーグは、SVリーグと新たなVリーグに再編された。チーム運営に必要なライセンス制度も導入され、交付には年間の売り上げが2億円などの条件が定められている。ヴィアティンにとっては厳しい内容も、Vリーグ理事でもある椎葉常務は「選手の息づかいや一つ一つのプレーの音が聞こえる距離感を味わってもらえれば、観客は面白いと思ってくれる」とプレーの向上が集客や経営面での改善につながると考える。
12年にサッカーチームがスタートしたヴィアティンは総合型スポーツクラブを目指し、他競技のチームも続々と生まれ、バレーボールは16年の男子に続き、女子チームは20年に発足したばかり。「選手たちからは少しずつ変化は見えてきている。観客には選手たちの頑張っている姿を見て応援してもらいたい」と期待する。
今季の開幕戦は26日に津市・三重大第一体育館でカノアラウレアーズ福岡と対戦する。当日は男子チームの試合も行われるなど、盛り上げを図る。
当初予定していた会場が27日投開票の衆院選の開票所として使用されるため、変更を余儀なくされるなど対応に追われた。思わぬ事態も乗り越え、選手たちは新しいシーズンでの活躍を目指す。【渋谷雅也】
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