◆娘が生まれたばかりのドレシェビッチは
3-0で結果的には快勝となった14日のアウェー福岡戦。町田は、堅守を支える両センターバックが前半のうちに負傷交代するアクシデントに襲われた。窮地を救ったのが、控えメンバー7人の構成を直前で変更した指揮官の判断だった。 プレスの激しさを90分間通して保ちたい町田はFWやMFの選手を多めにベンチに入れる傾向がある。その分、DFは1人と手薄になるが、この日はドレシェビッチと望月ヘンリー海輝(ひろき)の2人に増やしていた。㊧福岡戦を振り返るFC町田ゼルビアの望月ヘンリー海輝 ㊨「けがした仲間のためにも勝ちたい」と意気込むFC町田ゼルビアのドレシェビッチ=いずれも19日、東京都町田市で(加藤健太撮影)
キックオフ直後の前半2分、日本代表DFの中山雄太が相手と競り合った後に右膝を気にして倒れこんだ。急きょドレシェビッチが投入されたが、屈強な背番号5は当初、遠征に同行しないはずだった。 試合2日前の12日に娘が誕生したこともあり、練習が満足にできていなかった。指揮官は家庭の状況も考慮して同行させないつもりだったが、勝負師の勘が立ち止まらせた。「不安というか、自分の中で何かがよぎった」と一転してメンバーに加えた。◆本職じゃなくても「準備していた」
期待通りの活躍を見せたドレシェビッチは「けがはつき物。しっかり埋め合わせられた」と涼しげに振り返った。2点目が決まった後のゴールパフォーマンスでは、MF下田北斗が発案した祝福のゆりかごダンスに加わり、「予期していなかったのでうれしかった」と表情を緩めた。ドレシェビッチ(中)に祝福のゆりかごダンスを贈る町田イレブン=14日、ベスト電器スタジアムで(©FCMZ)
中山がピッチを去った不穏な空気が残る中、前半24分にはもう一人のセンターバックの昌子源がゴール前で激しく競り合い、うつぶせのまま動けなくなった。主将は脳振とうの疑いで頭を揺らさないよう厳重に担架で運ばれた。相次ぐ守備の要を早々に欠くことになり、普段から強気の黒田監督も「動揺しかなかった」と本音を明かした。 昌子の代わりに入った望月は本職ではなかったものの、「他のメンバーを考えたら代わりは僕かなと。準備はしていた」と冷静だった。日本代表に初選出された要因でもある優れた身体能力をいかして、ほとんど決定機をつくらせずに守り切った。◆「今一番やっちゃいけないのは」
采配も的中した逆境下での無失点勝利に、黒田監督は「運も向いてきている」と手応えを口にする。とはいえ、重圧のかかる優勝争いの真っただ中にあり、喜び一色ではない。「今一番やっちゃいけないのはこの勝利に一喜一憂して『これで行ける』と確信すること。気持ちが緩む雰囲気を一瞬たりともつくってはいけない」と厳しく引き締める。両センターバックが負傷交代する事態に「動揺しかなかった」と振り返るFC町田ゼルビアの黒田剛監督
負傷した昌子は歯が折れはしたが、大事に至らず札幌戦も出場する見通し。一方、中山について指揮官は「今後はまだ見えない」と言葉を濁した。 北海道出身の黒田監督は故郷のチームとの一戦にひときわ闘志を燃やし、「札幌は(残留争いで)尻に火がついてる状況なのでモチベーションは相当高いだろう。簡単なゲームには絶対ならない」と警戒する。史上初となる初昇格でのJ1制覇に向けて28日には2位広島との直接対決が控える。連勝で弾みをつけて天王山に臨めるか。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。