メジャーリーグ、ドジャースの大谷翔平選手が19日、マーリンズ戦で前人未踏の50本塁打・50盗塁に到達。記録を51-51まで伸ばしました。

大谷選手はこの試合で6安打3本塁打2盗塁。さらに10打点をあげ、日本選手最多を更新するなど記録づくめの1日でした。

試合はドジャースが20-4で大勝し、大谷選手にとって初めてのプレーオフ進出が決まりました。

■栗山&松坂に聞く“歴史的瞬間”

侍ジャパン前監督・栗山英樹さんと、松坂大輔さんに、大谷選手の凄さを聞いていきます。

(Q.栗山さんはなかなか褒めませんけど、今日はさすがに褒めますよね)

栗山英樹さん
「数字はちょっと別として、これだけ世界中の方が喜んで元気をもらってるっていう光景に関しては、ちょっと今日は良かったなっていうのはあります。数字はまだいけますよね」

松坂大輔さん
「期待しちゃいますよね」

(Q.ポストシーズン進出を決める大事な試合で、なぜここまで大暴れできたのでしょうか)

栗山英樹さん
「いつもこういう活躍をしたいんだと思います。自分のバッティングを微調整とか、色んなものが今日はすごくはまったというところもあると思いますし、ここから走ってほしいなと思います。こうだからみたいなのが分かったら、ずっとやってくれると思うので」

松坂大輔さん
「大谷選手がメジャーに行って、こういう状況で試合できることをずっと待ち望んでいたんじゃないですかね。チームは厳しい状況ですけど、色んな自分の個人の記録もありますけど、この状況を楽しんでプレーしてるように僕は見えますね」

大谷選手の言葉で気になる言葉がありました。

大谷翔平選手(17日試合後)
「見え方はいい。基本的には振るべきボールに反応できている。そこを自分で信じているかが『ゾーンを維持する』うえで大事」

(Q.この言葉はどう解釈したらいいですか)

栗山英樹さん
「僕の解釈ですけど、本人も悪くなるとストライクゾーンが広がっていくと。どのバッターもそうなんですけど、ストライクゾーンが広がってボールを打ちにいっちゃう。ただ、今年見てると、ゾーンがすごくしっかりしてきてるように見えたんで。なぜこういうこが起こるのかというと、ストライクゾーンと自分の打てるゾーンをバッターは持っているわけですよね。ストライクゾーンと打てるゾーンはちょっと違うはずです。ところが、体力的な疲れとか、技術的な要素なのか精神的なものなのか、色んなものでズレていきます。打ちたくなるので。自分が動いちゃうので、それがズレていって、翔平自体も少しズレを感じていたんじゃないのかな。自分が打てるゾーンをしっかり信じて振れさえすれば打てるんじゃないかという言葉ではないかと思います。それがもうピッタリ来たのかなと思いたいです」

(Q.爆発力の裏側には一体どんなことがあったのでしょうか)

松坂大輔さん
「先ほども言ったんですけど、アメリカに行ってから常にこういう状況の中で試合したいという気持ちはあったと思います。それが今まではなかなか、この時期に来るとそこが見えてないことが多かったので。プレッシャーを存分に力に変えているというんですかね。『40-40』を達成した時に、僕はインタビューの中で『僕は大谷選手の状態はあまり良くないと思います』という話をしたんですけど、大事な時期に向けてかなり状態を上げてきた。すごいなと思います。この先も期待しちゃうんですよね、勝手に」

(Q.今回、偉業を達成したローンデポパークは、WBCの決勝で世界一を奪還した場所でした。どうみましたか)

栗山英樹さん
「いやー物語がありますね。日本人の夢だった世界一になる。(50号は)ブルペンのすぐ横にボールが飛び込んで。できればブルペンに入れてほしかった。というのが、多分、一生のうち、WBC決勝を投げる前のブルペンで調整した翔平が一番緊張した場所だったと思うんですよ。そのことは僕も一生忘れないですし、そういうものがつながっていって、偉大な数字につながっていくのかなと思ったので、そこに打ったっていうのと、できれば入れてほしかったと」

(Q.そういうものは偶然なのか、何かそういう紡いでいく何かがあるのか。信じてるものはありますか)

栗山英樹さん
「これだけ、そういうことを思い出させてくれて。本人もすごく言ってましたけれど、大切な球場になったと思います。皆がこれだけ喜べるっていうのは、そういう物語も含めてなので。彼が背負った宿命というんですかね、本当に大きいんだろうなと思います」

■『異次元』今季の大谷“進化の秘密”

大谷選手は今シーズン、DH専任でした。まだ9試合残っていますが、現時点での成績を見てみます。

19日時点での成績

打率:.294(ナ・リーグ5位)
打点:120(ナ・リーグ1位)
本塁打:51(ナ・リーグ1位)
盗塁:51(ナ・リーグ2位)
史上初50-50達成

盗塁に関しては、こんな記録もあります。大谷選手が1試合の中でホームランを打って、なおかつ盗塁に成功したという試合が今シーズンは13試合ありました。この数字は“世界の盗塁王”と言われた、リッキー・ヘンダーソンさんに並ぶメジャー1位の記録です。

(Q.日本ではここまで盗塁をする機会はなかったイメージがあります。メジャーで盗塁にこだわっている姿をどうみていますか)

栗山英樹さん
「僕が走るなってサインを出し過ぎましたかね。日本ハムもそうですし、ジャパンの時も唯一、翔平に走るなのサインを出してます。一流の選手なので、この状況で走った方がいいか分かりますよね。だから走っていくんですけど、けがが心配だし、僕が止めてましたし、それは本人にも『自分が止め過ぎた?』って言ったら『いやいや、興味として今、盗塁のおもしろさを感じてる』と。けがをした後に、体の動きをもう1回色んなことを考えている中で、ピッチャーがこう動いたらホームに投げるとか、そういう研究を徹底的に今してると思うんですよ。そういう面白さっていうんですか。ピッチャーと自分の動きの感覚と勝負して、これなら行ける、これなら止まるみたいなことをやってるんじゃないかなと。非常に盗塁のヒリヒリする感じも含めて、前に進んでいるのかなって。楽しそうでしたね」

(Q.興味が湧いているところに、けがの研究もありますか)

松坂大輔さん
「投げ方を考えると思います。同じような投げ方だと、またやるんじゃないかという不安要素もあるので、これからどう投げていくかも考えながら、けがしたことをきっかけに、ピッチャーとしての新しい大谷翔平が来年見られるんじゃないかなと」

(Q.ピッチャーを研究していくなかで、盗塁も出来てしまう)

栗山英樹さん
「ちょっとした仕草とか体重のかけ方によって、けん制するのかホームへ投げるのか動きが出ますよね。その動きを徹底的に研究することによって、そういうところにも生きてるし、見てるんじゃないかと思うんですよ。それが楽しくてしょうがないところに行っているので、ここまで確率が上がっているのかなって僕は見えてますけど」

(Q.そもそも今は、ひじのリハビリの段階ですよね)

松坂大輔さん
「メジャーだと普段、外野・内野をやってる選手が投げない分、ファーストやったりとか、DHで出場したりはしますけど。本当にリハビリしてる途中だって皆忘れちゃいけないですよね」

(Q.研究していく、楽しんでいく、そして自分の成長につながっていく。その本質が大谷選手の盗塁の数に隠れているかもしれないですね)

栗山英樹さん
「大谷翔平選手の考え方とか、野球に対する進み方っていうのは、野球感が一番出るのが走塁と言われてるんですけど、今年の盗塁にはすごく出てると思います。この先、来年マウンドに戻った時に、どういう形で彼が進んでいくのか。ピッチャーやってないから走る、出てるっていうけど、来年も走れるかもしれない。全然違う次元の野球を見せてくれる可能性がある。盗塁の評価は野球全体で少し下がってたんですよ。これもまた復活するかなと思います」

(Q.ホームランを打つと盗塁ができなくなる。盗塁しようとすると、ホームランじゃ駄目になる。相反するものを両立せて記録を作ってしまう大谷選手にすごさを感じますが、いかがですか)

松坂大輔さん
「単純に今までやった選手がいないことが表しているように、両立はなかなか難しいですね。30本30盗塁、40本40盗塁は今まで何人かいるんですけど、これだけホームランを打って、これだけの盗塁の数を増やすというのは」

栗山英樹さん
「日本にも多分、長嶋さんなんかも1年目、ストーリーをガンガンしてるわけですよね。ホームランを打つと、長打の方が評価が高いんで、変な話お金になっちゃうので、けがのリスクのある走塁の方が少し意識が落ちていく。走ることのすごさを今回示してくれたのが、評価が上がる要因かなっていうところもあるんです」

(Q.自分で自分の走塁でチャンスを潰してるんじゃないかという質問の答えは)

松坂大輔さん
「その考え方面白いなって」

栗山英樹さん
「面白いですけど。200本打ったらまた別ですけどね」

■過去0人…『DHでMVP』は?

圧倒的な成績を残している大谷選手ですが、MVPに関しては高い壁がありそうです。その高い壁が“DH(指名打者)”ということです。

ます、DHの選手がシーズンMVPを獲得した事例がありません。

野球専門メディア『フルカウント』MLB担当 小谷真弥記者
「MVPの選考基準は、チームに対して打撃と守備の貢献という要素がある。DHは守備をしないので、そういった評価がむしろマイナスになるのでは」

例えば2006年、松坂さんの元チームメートでもある、レッドソックスのデビッド・オルティス選手。ホームラン54本、打点137の2冠でもMVPは獲得できませんでした。

ただ、大谷選手はどうなのでしょうか。

野球専門メディア『フルカウント』MLB担当 小谷真弥記者
「大谷選手は打撃以外にも50以上の盗塁がある。投票する記者は“前人未到の記録”を高く評価する傾向があるので、50-50を達成した大谷選手は3度目のMVPがあるんじゃないか」

(Q.DHとして史上初のMVP。どうなると思いますか)

松坂大輔さん
「十分あると思います。確かに今まで歴史上考えると、打点の評価が高いメジャーリーグでも、オルティス選手みたいにMVPが取れなかったりするんですけど、これだけ史上初がつく選手もいないですよね。成績もそうですし、そのインパクトを考えると、DHでMVPをとっても誰も文句言わないと思いますね」

■「夢に見た」ポストシーズンは

大谷選手はポストシーズンでずっと戦いたがっていました。

大谷翔平選手(2021年9月26日)
「(Q.ポストシーズンを逃して)もっと楽しいというか、ヒリヒリする9月を過ごしたい」

大谷翔平選手(2024年9月19日)
「(Q.ポストシーズン進出を決めて)メジャーリーグに来てから夢に見ていた舞台」

(Q.初の舞台で緊張感も加わると思いますが、大暴れできるでしょうか)

栗山英樹さん
「翔平の持ってるものが、何かの状況によってガラッと引き出されるという瞬間に立ち会ってきたので。それは本人が相当なプレッシャーと、追い込まれた状況の時だと思うんですよ。それが初のプレーオフになった時に、ワールドシリーズに向けてチャンピオンに向けて引き出される感じは、僕はものすごくあります」

(Q.WBCの時にも引き出されたなっていう感覚がありましたか)

栗山英樹さん
「ファイターズで言うと2016年の日本一に向かうところとか、WBCとか、本当にその環境が彼の力を引き出す状況になるかなと思ってます」

(Q.それは大谷選手自身が自分の底力、どこまでがエンジンの限界なのか分からないくらいですか)

栗山英樹さん
「本人は分かってないと思います。だから僕らは天井を高く見てて、状況さえ整ってプレッシャーがかかりまくると、皆が信じられないことが起こるという感じに見えます。そこは僕は絶対的に信じていましたし、今でも信じています」

(Q.松坂さんはワールドシリーズ制覇も経験されています。レギュラーシーズンと戦い方の違い、雰囲気の違いはありますか)

松坂大輔さん
「大きく違うと思いますね。僕自身も経験してますし、選手の起用法とか戦い方も変わってきますし、選手もファンもポストシーズンの雰囲気の違いは明らかに感じると思います。そういう意味では、ファイターズでの経験とか、去年のWBCの経験が生きてくるのかなと。栗山さんが監督だったら、前人未到の記録が達成されて、これからポストシーズン入ってくうえで、大谷選手を休ませますか」

栗山英樹さん
「僕は体調を整えたいです。休ませるというか、調整しながら整えたいですね」

松坂大輔さん
「休まない選手なので、それがちょっと心配というか。初めて162試合戦った後にポストシーズンが待っているので、体力的なものはどうなのかなというのは興味はあります」

松坂大輔さん
「本人は絶対大丈夫と言うと思うんですけど、僕は無理やりに少しずつ引いたほうがいいと思います。そこがポイントかもしれません」

(Q.ポストシーズンでいうと、ロバーツ監督が投手・大谷について『可能性は非常に低いがゼロではない』と発言しました。どう思いますか)

栗山英樹さん
「僕が監督だったら絶対投げさせないです。投げるって大変なことなんで」

松坂大輔さん
「僕も投げさせないほうがいいと思います。そういう状況が生まれないほうが僕はいいと思います」

(Q.大谷選手は今シーズン、ひじの手術や、水原被告のこと、そしてチーム移籍、色んなことがあったのに、ここまでの成績を残しています。ここまでを振り返って、どんなふうにみていますか)

栗山英樹さん
「本人も大変だった感じを受けましたけど、たださっき言ったように、苦しい状況に追い込まれれば追い込まれるほどを野球で力を発揮できる。今回の数字もすごい数字であると思います。ただ、これが皆で『よかったよかった』というよりも、『いやいや翔平、全然まだじゃん』って皆が思ってたら、もっと上に彼の力が引き出されるような気がしているので、ここで振り返らないほうがいいと思います。『これからだよ翔平』って皆が思ったほうがいいと思います」

▶「報道ステーション」公式ホームページ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。