ドジャースの大谷翔平投手(30)が19日(日本時間20日)のマーリンズ戦で3本塁打と2盗塁を含む6打数6安打、10打点4得点と大暴れし「50本塁打、50盗塁」をクリア。「51-51」まで数字を伸ばした。スポーツ取材歴30年以上、東京新聞の名物コラム「スポーツ探偵」でおなじみの谷野哲郎編集委員が、取材ノートの中から大谷の偉業についてのコメントを掘り起こした。    ◇ <取材ノート>
 大谷がなぜ、これほど活躍ができるのか。以前、日本ハム時代の恩師・栗山英樹さんに尋ねたことがある。栗山さんの返答は「翔平は『できるか』『できないか』では考えない。彼の頭には『やるか』『やらないか』しか選択肢がないんです」。

WBC日本代表を率いる栗山監督㊨と話す大谷=2023年3月5日、大阪・舞洲で

 続けて「『できるか』『できないか』だと、『できないかも』と思い、思考が止まってしまう。彼はやると決めたら、あとはどうしたら実現できるかを逆算して行動する。それだけでしたね」。自分で自分の限界を決めない信念は二刀流を生み、今回の快挙の原動力にもなった。

◆ドジャースの同僚もうなる、メジャー屈指の打球速度

 「知ってるかい? ショウヘイの打球は190キロも出るんだぜ。信じられないよ」。大谷について、同僚のベッツはこう話していた。大リーグでも屈指の打球速度に彼の打撃の秘密が隠れているように思う。  日本ではなじみが薄いが、米国では投手の球速だけでなく、打者の球速も物差しにする。球を強く、速く弾き飛ばすことにフォーカスすると、角度がつけば本塁打、つかなければヒットと単純化できるからだ。大谷は米国に行って「スイングを速くする」→「筋肉量を増やす」→「練習を工夫する」と考えたのだろう。逆算の思考は盗塁に関しても発揮されたはずだ。

大谷翔平選手がメジャー史上初の「50本塁打、50盗塁」に到達したことを伝える大型モニター=20日、東京都千代田区で

 面白い話がある。今年4月、現地の解説者がこんな逸話を披露していた。「オオタニがエンゼルスに入団した年、体力測定をしたら、ほとんどの種目でトップだった。垂直跳びを除いて。誰も気にしていなかったが、1カ月後に測定したら、垂直跳びは1フィート(約30センチ)も伸びていた」。少年のように目標を設定し、クリアのために全力を尽くす。史上初の「50—50」も、大谷にとっては垂直跳びと同じだったのかもしれない。

◆「例えば今年は打者、来年は投手に専念、隔年の二刀流なら」

 ちなみに今回の快挙を予言していた人がいる。元プロ野球中日の選手で野球解説者だった大島康徳さんだ。残念ながら3年前に亡くなったが、生前、こんな話をしていた。

在りし日の大島康徳さん=2020年撮影

 「僕はいろいろな二刀流があってもいいと思うんですよね。例えば、今年は打者だけ、来年は投手に専念と、隔年で投打の二刀流に挑戦してみる。大谷選手の能力なら、それぞれ、とてつもない成績を残すと思いますよ」  手術による打者専念だったが、予言は的中した。だとすれば、もし、投手に専念したとすれば、どうなるのだろう。想像するだけで楽しい。(谷野哲郎) 

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