【阪神-中日】勝利の立役者となった阪神の佐藤輝明(左)と才木浩人。チームは6連勝で首位に浮上した=21日、甲子園(水島啓輔撮影)

6連勝で奪首! それよりも心強いのは、岡田彰布監督(66)の「連覇構想」が過信ではなく確信に近づいたことです。阪神は21日の中日戦(甲子園球場)に3-0で勝利して引き分けを挟んで6連勝。首位浮上です。指揮官は「まだまだ21試合」と話しましたが、奪首よりも手応えを感じ取ったのは、連覇に向けての自らの構想に間違いや狂いがなかったことでしょう。「選手たちはキャリアハイを目指してほしい。主力には伸びしろがある」。主力の成績に上積みがあれば連覇は成せる-という〝岡田の推察〟が過信ではなかったことを裏付けた21試合だったはずです。

首位中日に3連勝

もう負ける気がしない…と言ってもいいぐらいですね。戦う前まではリーグ首位だった中日との3連戦(19~21日=甲子園)で見事に3連勝。連日、満員の観衆で膨れ上がった本拠地で虎は躍動し、立浪竜をギャフンと言わせました。

実はこの3連戦のある試合に息子と孫が観戦に来ていました。親子そろって、黄色いユニホームと虎がほえているハッピみたいな服を着て、手にはメガホン。この前まで〝無色透明〟だった孫がいつの間にかタイガースカラーに染まってしまい? じ~じとすればチョー複雑! この子は果たして幸せな人生を送ってくれるのだろうか…とマジで心配になりました。

【阪神-中日】雨の中、力投する阪神の才木浩人。7回3安打無失点で2勝目を挙げた=21日、甲子園(林俊志撮影)

でも、それは暗黒時代を取材してきた自らの記者人生が影響しているわけで、今の強い、強い阪神を見るとこの先、何度も何度も勝って、孫は六甲おろしを心の底から歌えるんやろなぁ…なんて、どこかに救いを求める自分もいるのです(笑)。

「まだまだ21試合ですから」

話が少し脱線しましたが、とにかく阪神は強いし、巨人や中日は弱い。少なくともこの1週間はそうでした。そして岡田阪神は6連勝で一気に首位浮上です。

開幕2カード連続負け越しを「想定外や」と書かれたことにオカンムリの岡田監督は、いまだに虎番の囲み取材に応じていません。ただし、本拠地の勝ち試合だけは勝利監督インタビューでテレビカメラの前では話します。なので、ウイットに富んだ岡田語録はまだ聞かれないのですが、首位浮上に関して「まあ全然それはね、まだまだ21試合ですからね」とコメント。「お~ん、そらそうよ。ハッキリ言うて」というお決まりのフレーズが聞けないのは寂しいですね。聞けないから禁断症状が出てきて、独り言で「お~ん、お~ん」と言ってはみますが、あの独特な味はとても出せません。

昨季は5月に快進撃

またまた少し横道にそれましたが、開幕21試合で早くも首位浮上。指揮官が話した通り、まだまだ21試合を11勝8敗2分けで終えた段階で、この先は長い。それこそ山あり谷ありです。昨季は5月に快進撃を見せましたが、パ・リーグとの交流戦では苦戦し、そこを抜け出してからVロードが始まりました。なので開幕21試合で奪首といっても、岡田監督が言う通りに「全然それはね」でしょう。

しかし、一つだけ確実に手応えを得た21試合でもあったはずです。それはシーズン前、いや18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶり2度目の日本一を達成した昨季が終了した時点で、岡田監督がハッキリ言っていた「連覇構想」が決して独りよがりの過信ではなかったということですね。

【阪神-中日】六回、先制3ランを放ち、才木浩人(左端)らチームメートに迎えられる阪神の佐藤輝明(8)=21日、甲子園(林俊志撮影)

指揮官は連覇に向けての条件、見通しについて触れると「まだまだ選手たちはキャリアハイの成績を残していない。まだ伸びしろはある。それぞれがキャリアハイを目指して、成績を上げてくれれば(連覇は狙える)」と話していました。なのでシーズンオフの戦力補強も、巨人へ移籍したリリーフのケラーの後釜としてゲラを獲得したのが目立つ程度で、ドラフト以外の野手の補強はなし。V1戦士の〝伸びしろ〟を連覇構想の中核に据えたのです。

主軸のバットから快音

逆に言えば、若手の前川や野口の抜擢(ばってき)で主力野手に刺激を与える地味な戦略でもありましたね。なのでオープン戦は3勝14敗1分けで12球団最下位となり、開幕2カード連続負け越しとなると「やっぱり戦力補強しなかったからや」とか「外からの戦力補強をしていないから、チームのムードが沈滞している」などなど、チームの周辺にはさまざまな声が流れていました。このコラムでも、開幕から波に乗れない状況がこの先も続くならば、若虎の抜擢しか残る手段はない-と書いたばかりです。

しかし、わずかながら主力選手たちのバットから快音が奏でられ始めると、一気にチームの機運も上がってきました。森下が、大山が、佐藤輝が打ち始めると一気に6連勝で首位浮上。チーム防御率2・06はリーグ2位(トップは巨人の1・90=いずれも21日現在)。投手陣は相変わらず安定していますから、クリーンアップを中心に打線が活性化すれば、強いタイガースがすぐに戻ってくるわけですね。

19日の中日戦で、五回に今季1号ソロを放つ阪神の大山悠輔。不振にあえいでいた主砲が復調気配を感じさせた=19日、甲子園(松永渉平撮影)

待ち遠しい「語録」復活

「オープン戦で大負けしても、評論家のシーズンの順位予想は阪神優勝が圧倒的に多かった。確かに関西で仕事をしていれば、そういう風になるんだけど、やはり投打に戦力がある…という見立ても間違いなくあった。普通に主力選手が力を発揮すれば間違いなく優勝争いはするだろう、という予想になる。他球団と一回りして、今が二回り目だが、戦ってきた感触として、やはり阪神は強いよ」とは阪神OBの言葉です。

つまり、岡田監督が開幕前に見立てた通り、主力選手たちがそれぞれキャリアハイを目指し、少しでも成績がアップするならば、大きな戦力補強がなくとも連覇への扉は開くだろう-という筋書きが今、おぼろげながら目の前に見えてきたわけですね。なので、奪首よりも連覇構想が過信ではなく確信に近づいてきたことを確認したことの方が、開幕21試合の何よりの収穫だったはずです。

20日の中日戦で、七回に2点適時二塁打を放つ阪神の前川右京=20日、甲子園(水島啓輔撮影)

それにしても、少々しつこいようですが、虎党愛読の岡田語録が一刻も早く復活する日が待ち遠しいですね。阪神が勝つことは楽しいのですが、そこに岡田語録が加わってこそ勝利の味も格別になるのです。球団の広報部の方々もとてもご苦労なことでしょうが、一刻も早く天下人のご機嫌を戻してくださいませ。ファンも楽しみに待っていると思います。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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