第106回全国高校野球選手権大会で、各校は熱中症対策として前回大会から実施されている「クーリングタイム」の活用の仕方に知恵を絞っている。大会本部も運用を一部変更するなど試行錯誤が続く。
背番号1人2枚配布
クーリングタイムは五回終了時に10分間、選手らが空調の利いた部屋で体を冷やしたり、水分補給をしたりする目的で昨年から導入された。今大会からは大会本部がユニホームの着替えができるように背番号を1人2枚ずつ配布するようになった。
5年ぶりに夏の甲子園に臨んでいる東海大相模(神奈川)は、「着替えの練習」に取り組んだ。春夏合わせて通算5回優勝の強豪だが、甲子園でのクーリングタイムは初めての経験だ。母校を率いる原俊介監督は「汗をかいた体で汗ばんだ服を着替えるのは大変。時間もかかる」と着替えの練習も取り入れた。大会期間中の練習で、本番と同じように試合用ユニホームを着用。練習の合間にベンチ裏へ向かい着替えた。早く着替えるために5分を目標にしたという。
12日の富山商との初戦では効果てきめんだった。クーリングタイムを滞りなく使い、六回の攻撃で和田勇騎選手(3年)が適時二塁打を放った。和田選手は「練習したおかげでスムーズに着替えられた」と効果を実感。チームは4―0で快勝した。
足がつらないように
昨年の反省を生かしたのは聖光学院(福島)だ。前回大会は、六回以降に選手の足がつるアクシデントが起き、斎藤智也監督は「汗でベタベタで、さらに冷えまくって、それで外に出て行ったら体がおかしくなっちゃう」と振り返る。今大会の初戦となった11日の鶴岡東(山形)戦では、ユニホームから下着に至るまで全て着替えさせた。試合は1―2で敗戦したものの、「時間はうまく使えたんじゃないかなと思う。そういう意味では前進した」と手応えは得た。
大会本部もチームからの要望を受けて、前回大会でクーリングタイム後に足がつる選手が多くいたことを受け、六回の試合再開に向けたウオーミングアップを前回の「1分半」から「3分」に変更した。
2年連続出場の広陵(広島)の関係者は「(冷房の利いた部屋に)あまりいすぎるなよと声を掛けていた。冷えたところから一気に暑いところに出るとクラッとする。(ウオーミングアップの時間変更は)すごくありがたい」と歓迎した。
運用の変更は大会中にもあった。第4日(10日)から、午後4時以降に始まる試合でもクーリングタイムの実施を始めた。当初は開始時間が午後4時を過ぎる試合では、比較的涼しくなると見込んで原則実施しないとしていた。しかし、9日までに熱中症とみられる症状があった8選手のうち、4選手は午後4時以降の試合だった。酷暑との闘いは続くが、少しでもベストコンディションに近づけられるように工夫している。【黒詰拓也、生野貴紀】
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