パリで走った距離は計62キロあまり。今大会で手にしたメダルは銅が二つと金が一つ。「スタートしてからすべてのステップが苦しかった。今日ほど集中したことはなかった」。11日に行われたパリ・オリンピック・陸上女子マラソンで優勝し、陸上の長距離3種目でメダルを獲得したオランダのシファン・ハッサンは最後のレースをこう振り返り、「信じられない」と喜んだ。
まさに快挙だった。
2日と5日に5000メートルの予選と決勝、9日に1万メートルがあり、いずれも銅メダルを獲得。さらに中1日で42・195キロを走り、2時間22分55秒の五輪新記録をたたき出した。
1回の五輪でこの3種目でメダルを獲得したのは、1952年ヘルシンキ五輪で3冠を達成したチェコスロバキアのエミール・ザトペック(2000年に死去)以来。ハッサンはゴール後、両手をたたいて跳びはね、全身で喜びを表現した。
元々は難民だった。出身はエチオピア。
五輪専門メディア「インサイド・ザ・ゲームズ」などによると15歳の時、母親に飛行機へ乗せられ、オランダにたどり着いた。そこで出会った別のエチオピア人が地元の陸上クラブに通っていたのがきっかけで競技を始めたという。
ハッサンは当時、ほかの選手の陰に隠れるような内気な少女だった。だが、コーチが才能を見抜き、五輪選手を養成するトレーニングセンターに送り込んだ。13年にはオランダ国籍を取得した。
東京五輪では5000メートルと1万メートルで2冠を達成していたハッサン。パリ五輪ではこの2種目は銅メダルに終わったものの、最後のマラソンで有終の美を飾った。【パリ金子淳】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。