レスリング女子68キロ級3位決定戦で勝利し、声をあげる尾崎野乃香=シャンドマルス・アリーナで2024年8月6日、平川義之撮影

レスリング女子68キロ級(6日、シャンドマルス・アリーナ)

尾崎野乃香選手(21)=慶大 銅メダル

 理想に描いた舞台ではなかったが、尾崎野乃香選手は「今、自分ができること」に集中した。3位決定戦で東京オリンピック銀メダルのブレッシング・オボルドゥドゥ選手(ナイジェリア)を破り、初出場で銅メダル。「気持ちを切り替えてここに立てた自分を褒めたい」と涙をこらえ喜びを語った。

 5日の準々決勝は壮絶な戦いの末に敗れた。東京大会銅メダリストのキルギス選手を相手に最大6点差を付けられ、そこから同点に。逃げ切れば規定で勝ちだったが、終盤に失点して、金メダルの夢は早々に絶たれた。

 失意に暮れたが、直後に父からもらった電話に励まされた。「壁にぶち当たって、そこからはい上がれる人とはい上がれない人がいる。それをはい上がれるのが野乃香だ」。もう一度闘志に火が付いて、前に進む勇気をもらうことができた。「金メダルしか見てこなかったので悔しさはあるが、私のパリ五輪はこれで良かったと思う」と語った。

 小さい頃から実績を重ね、日本オリンピック委員会(JOC)のエリートアカデミーに所属しながら、大学は決して強豪とは言いがたい慶大に進学。イスラム文学を学び、文武両道を地で行く、自分のスタイルを突き進んだ。何とかパリの舞台に立つため、主戦場の62キロ級から68キロ級に階級を上げての挑戦にも前向きに取り組んだ。「いばらの道だった。だからこそもっともっとすごい姿を見せたかった」

 その分、次回ロサンゼルス五輪への思いは強まった。現在は21歳。どの階級かは明言しなかったものの「次は4年後、絶対(金を)目指すと心から思えた」。そこには夢の舞台でどん底を味わったからこそ、見えた景色があった。【パリ角田直哉】

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