試合後、父・敏行さん(右)にねぎらわれた黒川朝元選手=船橋市民球場で
第106回全国高校野球選手権千葉大会1回戦で12日、西武台千葉に0-13で5回コールド負けしたわせがくのエース、黒川朝元(あさひ)選手(3年)は国指定の難病を患う。中学時代は、潰瘍性大腸炎の治療などで学校にほぼ通えなかった。通信制のわせがくで初めて本格的に野球と向き合い、その楽しさを知った。(平野梓) この日、先発を任された黒川選手は「人生で初めて本気になってスポーツに取り組み、成長できた3年間だった。同じ病気でつらい思いをしている人に、諦めずに頑張れば野球を楽しむこともできる。プレーでそう伝えたかった」と思いを語る。 父・敏行さんは東京学館船橋の監督で、兄・凱星(かいせい)さんはプロ野球千葉ロッテマリーンズの現役選手という野球一家。ただ、小学5年から病気に苦しんだ黒川選手は、野球に打ち込む時間がなかった。大腸の炎症により腹痛や下痢、血便などの症状が続く潰瘍性大腸炎は、原因が不明で根本的な治療法がない。終わりの見えない闘病の日々が精神的にこたえ、不登校になった。 高校は、同じように不登校になった生徒らも通う、わせがくを選んだ。試行錯誤の末に見いだした漢方治療で症状を抑えられるようになると、やっと野球に専念できた。経験が少ないながらも球速は最速138キロまで上がった。鍛え抜いた身体の体脂肪率は7%。「野球でお金を稼ぎ、同じ病気で苦しむ人たちに寄付したい」との夢を抱き、卒業後も野球を続け、兄と同じプロの世界を目指す。 最後の夏は初戦で敗退。敏行さんは「彼にとって、節目の日になったんでしょうね」と、息子の頑張りを笑顔でたたえた。
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