今月5日、沖縄・那覇空港で身体障害がある女性が格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーション(本社・大阪府)の台湾行きの便を利用しようとしたところ、電動車椅子のバッテリーが外から見えないことを理由に搭乗できなかった。バッテリーの目視確認を巡っては航空会社で対応が異なっており、女性は「差別的な対応だ」と訴えている。
搭乗できなかったのは、台湾籍の林君潔さん(43)。骨が折れやすい難病の骨形成不全症を抱え、電動車椅子を使って生活している。林さんは障害者らが集う沖縄のイベントに参加するため、1日に別の航空会社で同じ車椅子に乗って来日。5日にピーチ機で台湾に戻る予定だった。
国土交通省によると、発火の恐れがあるバッテリー類は航空法で輸送を禁じる危険物にあたる場合があり、航空各社は持ち込みに条件を設ける。ピーチ社のウェブサイトには、身体が不自由な乗客への案内として「バッテリーの目視確認ができない場合、詳細な情報がわかる書類などをご持参ください」と書かれていた。
林さんの車椅子はバッテリーがカバーで覆われ、特殊な工具で開けないと目視できない。そのため、バッテリーの品名などが分かるメーカーの説明書を事前にメールで送っていた。
林さんによると、那覇空港の搭乗ゲート前で待機していた出発直前、ピーチ社のスタッフから「バッテリー本体が見えないため搭乗できない」と告げられた。バッテリーの情報を事前に知らせたことを伝え、持参した説明書も見せたが、判断は変わらなかった。
林さんは翌6日、別の航空会社を使って台湾に戻った。取材に「さまざまな国に行き、たくさんの航空会社を利用したが、バッテリーを理由に搭乗拒否されたのは初めて。車椅子は私の『足』。今回の対応はとてもショックだ」と話した。
障害者団体「DPI日本会議」(東京都)は林さんから相談を受け、8日付で国交省に事実確認を進めることなどを申し入れた。佐藤聡事務局長は「カバーでバッテリーが見えない電動車椅子は多い。目視確認を必須とすることは実態に合っていない」と指摘する。
ピーチ社によると、安全上の観点から社内規定で書類確認だけでなくバッテリーの目視も義務づけている。サイト内の車椅子確認フォームでも、工具がないとバッテリーを外せない車椅子は預けられない場合があると断っているという。取材に「差別という気持ちはなく、そのように感じたのであれば大変申し訳ない。サイトをもう少し分かりやすい表示にできないか社内で検討している」(広報室)としている。
4月1日には改正障害者差別解消法が施行され、障害者への合理的配慮義務が民間事業者に課された。事業者と障害者の建設的対話を通じて共に対応策を検討することも促している。国交省の担当者は「障害者差別解消法などに反していないか事実確認を進めている」としている。【黒川晋史】
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