新型コロナウイルスの増殖を抑制する物質をハーブの一種「ホーリーバジル」から発見したと、鹿児島大理学部の濵田季之(としゆき)准教授(56)=天然物有機化学=らの研究チームが発表した。タイ料理「ガパオライス」にも使われる生活に身近な植物で、天然由来の治療薬になり得る化合物の開発を目指す。
成果は日本生薬学会発行の季刊専門誌「Journal of Natural Medicines」(11月25日付け)オンライン版に掲載された。
発表によると、バジルには「スルホ・キノボシル・ジアシル・グリセロール」(SQDG)と呼ばれる化合物が含まれている。この化合物がコロナウイルスにとって増殖に重要な「メインプロテアーゼ」という酵素の働きを強力に阻害するという。培養細胞を使った実験でも感染の抑制を確認した。
濵田准教授らは農作物を治療薬開発につなげる研究を2023年度に開始し、鹿児島県南大隅町産の無農薬バジルに着目した。従来もメインプロテアーゼの働きを阻害する治療薬はあったが、自然由来の物質を活用することで安全な治療薬につながる可能性がある。
メインプロテアーゼはウイルス株が異なっても共通で、さまざまな株のコロナに対応できるという。
一方、SQDGは細胞への浸透率が低いとみられている。現在のままでは実用化には膨大な量のバジルが必要となり、この課題の解決を目指す。濵田准教授は「比較的身近な農産物に治療薬開発の可能性を見いだせた。新たな地域産業につながることも期待できる」と話している。【梅山崇】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。