長野・箕輪町で、約100年の歴史がある町のシンボルの水路橋をめぐり、保存か撤去か、町と住民で意見がすれ違っている。町によると、橋の補強にかかる費用は最低でも4億円だという。
住民「残して欲しいけど壊れかけてる」「色々な思い出が…」
橋の保存を巡って意見が対立しているのは、長野県の真ん中に位置する箕輪町に架かる長さ145メートルの水路橋だ。
約100年前の1928年に完成し、土木学会による「日本の近代土木遺産」などにも選ばれている。
長い間、住民の生活道路として使われてきたが、老朽化もあり、10月1日から歩行者や自転車以外は通行止めとなった。
橋を近くで見ると、様々な場所が傷んでいるのが目につく。橋の柱などもコンクリートが剥がれ落ちるなどして、ボロボロの状態だ。
こうした老朽化を受け、町長は9月の議会で、橋は役割を終えたと説明した。
箕輪町 白鳥政徳町長：
躯体自体の劣化が顕著でありまして、新たに橋を架け直すということは金額的にも大変なことでありまして、費用対効果の面からも現実的ではない。道路橋としてはもう十分役割を果たした。
その上で、橋を残すか問われた町長の答えはこうだった。
箕輪町 白鳥政徳町長：
決してないとは言えませんが、これ（橋）を残存させるだけの価値があるというふうには思われませんでした。
町によると、橋の補強にかかる費用は最低でも4億円。耐震性などを考えると、費用はさらに膨らむという。加えて、既に迂回路があることから、残すほどの価値はないとして、撤去する方針を示した。
長年、生活道路として地域に根ざしてきただけに、住民の思いは複雑だ。
近隣住民：
これなくなっちゃうと、田んぼ行くにも何するにも大変。だけどね、町も困ってると思うんだ。見た通り、ものすごいじゃん。これ再生するとなると多くのお金が掛かる。
近隣住民：
残して欲しいけど、だいぶ壊れかけてる。それを見ると、そんなにお金は掛けられないだろうし。
近隣住民：
歴史的なものだから残して欲しい。色々な思い出があるから…。
箕輪町 白鳥政徳町長「やむを得ない措置としてお願いしている」
橋の保存を訴えるのは、町と協議をしてきた地元の水路橋対策委員会。橋の価値をこう訴える。
水路橋対策委員会 関文成委員長：
八乙女地区のシンボルと思っています。
水路橋対策委員会 中島光彦さん：
水路橋自身が他にも少ない。水路橋を皆さんに見て頂きたい景観というところもある。子供のころから橋を見てきた方々の思いも受け止めながら保存していきたい。
一世紀近くの間、地域のシンボルとして親しまれてきた水路橋。他にはない景観を守るためにも、永久保存をしたいとしている。
すれ違う町と地元住民の思い。とはいえ、町長は対立を望んではいない。
箕輪町 白鳥政徳町長：
私は対立しているとか、一方的にやろうというふうに思って、この事業はしておりません。やむを得ない措置としてお願いしている。
それは、地元の住民たちも同じ。
水路橋対策委員会 中島光彦さん：
本当に危険であれば、撤去しないといけない。できるだけ保存したいということと、安全性を両天秤にかけながら検討している。
歴史と思い出が詰まった橋の保存か、撤去かーー。判断はまだ先になりそうだ。
（「イット！」10月29日放送より）
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