東京大が9月、授業料を値上げする方針を示した。既に値上げしている国公立大もあり、さらに広がる可能性も指摘されている。高等教育のコスト負担に関する議論は27日に投票される衆院選でも争点となっている。滋賀県内唯一の医科大学であり国立の滋賀医科大学(大津市瀬田月輪町)の学生は何を思うのか取材した。【菊池真由】
「裕福な家庭との差が開いていってしまうので望ましくないと思う」と男子学生(21)は指摘した。医学部の場合、国公立大は入学料と6年間の授業料で約350万円とされる一方で、私立大は平均2000万~4000万円台。医療を大学で学びたいと望む多くの受験生にとって国公立大「一択」との声もある。国公立大が私立大に近付いていけば、経済面で選択肢がなくなる受験生が出る恐れもある。
国公立大の運営が大きな話題となったのは今年の6月だった。全国86の国立大でつくる国立大学協会が「質の高い教育研究活動を維持、向上していくために寄付金などの外部資金や自らの収入を増やす努力をしています。しかし、もう限界です」と声明を発表した。
国立大の財政状況が悪化しているのは「運営費交付金」の減額がある。少子化や国の財政難を理由にここ20年で13%減少した。また、光熱費の高騰や社会保険などの経費増加も圧迫理由となっている。
滋賀医大広報課は授業料の値上げについて、取材に「検討していません」と答えた。ただ、実習中の男子学生(22)は「(大学の)メールでも光熱費が上がってきていると連絡がくる」と明かす。
千葉大などが既に値上げに踏み切っており、滋賀医科大の学生も対岸の火事とは捉えていない。特に気にしているのが「使い道」だ。女子学生(21)は「上がった学費が何に使われているのか。教育材料など良い方向ならばいいが、用途が明確になっていない」と首をひねった。
各党は衆院選で教育費についてさまざまな訴えをしているがほとんどが負担減だ。その中で、自民党は5月に教育・人材力強化調査会の提言で、国立大について国際競争力の強化などを目指して、値上げも視野に入れた適正な授業料の設定を検討するとしている。
毎日新聞が衆院選の全候補者に実施したアンケートでは、「国立大学の学費を値上げすることに賛成ですか、反対ですか」との質問も設けた。県内の小選挙区に立候補した10人のうち、1区の自民党前職、大岡敏孝氏だけが賛成で、他の候補者は反対だった。
日本を支える人材育成を巡る課題に有権者はどんな答えを求めるのか。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。