裁判のやり直しに向けた道が切り開かれた。38年前に福井市で起きた女子中学生の殺人事件を巡り、名古屋高裁金沢支部は23日、再び再審開始を認めた。1度目の開始決定は取り消された経緯があり、無実を訴えてきた男性は「ほっとしたが、浮かれるわけにはいかない。まだ闘いは続く」と気を引き締めた。
「再審開始」。午前10時過ぎ、金沢市の裁判所前で旗が掲げられると、待ち受けた支援者約40人から大きな歓声と拍手が湧き起こった。前川彰司さん(59)さんは両手を大きく上げ、喜びを体全体で表した。「おめでとう」「バンザイ」とさらに歓声が上がった。
前川さんの弁護団はその後、金沢弁護士会館で報告集会を開いた。前川さんは「冤罪(えんざい)だからといって再審が開かれるわけではない。勝ってかぶとの緒を締めよ。更に闘いの道を歩んでいきたい」と語った。
「堅実で正当な認定だ」。弁護団長の吉村悟弁護士は決定を評価した。第2次請求で新たに開示された捜査報告書などが再審開始の決め手になったとしたうえで、「決定が覆る余地はない。検察側が異議申し立てをする余地は常識的にないと考えている」と述べた。
さらに続けて、前川さんが一貫して無実を訴えていることを踏まえ、「悲惨な冤罪被害の救済をこれ以上、遅らせることは人道上許されない」と語気を強めた。
集会には再審無罪となった当事者も駆けつけた。大阪市東住吉区で1995年に女児が死亡した火災で殺人などの罪に問われ、再審無罪が確定した母親の青木恵子さん(60)は「警察は自分たちの罪を認めて反省すべきだ。長い間、証拠を隠したことが許せない」と憤りを隠さなかった。
最後に弁護団は「一日も早く再審が開始され、前川氏が救済されるよう、決定に異議を申し立てることは許されない」とする声明を読み上げた。【萱原健一】
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