石川県輪島市曽々木地区と珠洲市真浦町をつなぐ国道にたまった土砂を撤去する工事車両=輪島市曽々木で2024年10月21日午後2時30分、阿部弘賢撮影

 地震からの復旧も緒に就いたばかりの石川県奥能登地方を襲った豪雨から21日で1カ月となった。各地で黙とうが行われ、複数の住民が犠牲になった輪島市久手川(ふてがわ)町の現場には花束がささげられた。地震による避難生活が11カ月近くに及ぶ人が多数いる中、水害でさらに400人近くが避難生活を強いられている。生活再建への道のりは長く、被災者の精神的ケアが欠かせない状況だ。【阿部弘賢、国本ようこ、砂押健太、竹中拓実、戸田栄】

 金沢地方気象台によると、線上降水帯の発生により、9月21日には輪島市で1時間の最大降水量が121・0ミリに達するなど記録的雨量を観測。越水や土砂崩れが多発した。

 石川県の18日までの水害まとめでは、死者は同市10人、珠洲市3人、能登町1人の計14人で、ほかに輪島市の1人が行方不明になっている。住家被害は全半壊55棟など1487棟に達し、非住家建物は確認しきれていないのが実態だ。

 農地は1135カ所が土砂流入などの被害を受け、収穫直前の稲などが収穫できなくなった。水路は664カ所、ため池も74カ所で、のり面崩壊などの被害を受け、来年以降の作付けへの影響も懸念されている。

 被災地では、道路だけでなく、住宅敷地や農地など至る所を埋めた流木や土砂の撤去が問題になっている。ボランティアの協力が頼りだ。また、奥能登は丘陵地や中小河川を越える市町道が、集落と自治体中心部を結ぶ生活道路となっている。崩落した橋りょうも多く、早期復旧しなければ、「集落の放棄」につながりかねない。

 5月以降に仮設住宅への入居が本格化する中で起きた豪雨災害に「心が折れた」と語る被災者は多い。インフラ復旧に集中し、精神的ケアが見過ごされがちなのは過去の災害でも指摘されてきた。日本赤十字社は、9月末から三重、福井、富山など各県4~5人の「こころのケア班」が避難所巡回を行っており、継続する方針という。

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