1966年に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人が殺害された事件を巡り、袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)で無罪判決が確定したことを受け、県警の津田隆好本部長は21日、浜松市の袴田さんの自宅を訪れて直接謝罪した。津田本部長は「58年間の長きにわたり、言葉では言い尽くせないほどのご心労、ご負担をおかけし、申し訳ありませんでした」と頭を下げた。
津田本部長は「より一層緻密かつ適切な捜査に努める」とも述べた。姉秀子さん(91)は「今更、警察に苦情を言うつもりはありません」と応じた。袴田さんは立ち上がって津田本部長と相対したが、津田本部長に促されて着席し、謝罪を聞いた。
面談後、秀子さんは「一区切りというか、けじめをつけてもらうことが、巌にとってありがたいこと。誠心誠意謝ってもらった」と語った。袴田さんは硬い表情で顔を紅潮させていたとし、「謝りに来たことを分かっていると思った」と振り返った。
静岡地裁の再審無罪判決は、捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)を認定したが、津田本部長からこの点についての言及はなかったという。秀子さんは「(事件)当時の方ではないし、職務上来ていると思う。その人にぐだぐだ言っても何も始まらない」、弁護団事務局長の小川秀世弁護士は「(警察の問題を)踏まえてと(謝罪の意味を)理解した」と話した。
津田本部長は面談後の取材に対し、謝罪は袴田さんと秀子さんの2人に向けたものだったと明かした。「強制的、威圧的な取り調べがあったということで誠に申し訳なく思っています」としつつ、証拠の捏造については「警察としては答えはなかなか難しい」と述べるにとどめた。
事件では、袴田さんが逮捕・起訴されて死刑とされたが、第2次再審請求審で再審開始決定が出て裁判がやり直されることになり、静岡地裁が9月26日、無罪判決を言い渡した。静岡地検が10月9日に上訴権を放棄して再審無罪が確定した。【山田英之、丘絢太】
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