スマホ画面に見入る大学生。「国語に関する世論調査」では、読書量減少の最大の理由としてスマホなど情報機器の使用が挙がっていた(記事には直接関係ありません)

 読書離れが進んでいる。先月発表された「国語に関する世論調査」で、1カ月に1冊も本を読まない人は6割超と過去最多の割合になり、大きなニュースとなった。なぜ読書離れは進むのか? 若者は読書にどう向き合っているのか、首都圏の大学に在籍する2~4年生計8人に語り合ってもらった。【司会・まとめ、上智大・清水春喜(キャンパる編集部)】

 ――普段、どれくらい読書をしていますか?

 A 月に1冊ほど。普段は電車の中で読んでいる。

 B 私は月に読み終えるのは2冊かな。同時並行的に何冊も読んでいる。

 E 月に1冊程度で、私も電車で読むことが多い。けれども、スマートフォンを触ったり、寝てしまったりすることが度々ある。

 F 本が好きで、毎月平均して8冊くらい読んでいる。1回読めば内容は頭に入るので基本的に図書館で借りる。

 G 月に2冊くらい。

 H 私は自発的な読書はしない。大学の課題文とか、必要に迫られて読むことはあるけれど。

“スマホ漬け”から逃れたい

 ――読書のどこに良さを見いだしていますか?

 B スマホを使った後、無駄な時間を過ごしたなと感じることがある。それが嫌で、虚無感を埋め合わせるような感覚で本を読む。読書をすると有意義な時間を過ごした、学びを得たという感覚がある。

 F 読書習慣があるから自然と読む。高校2年生の時までスマホを持たなかったことが影響している。

 A 本を読んでいるとデジタルデトックスをしている気になれる。スマホを使っていると目が疲れるから、体を休めることにもなる。

 ――デジタルデトックスというのは、ストレスの軽減を目的としてスマホなどデジタル機器から距離を置くことですね。

 G 私も紙の本を読んでいると安心する。逆に、スマホやパソコンを使っていると気が散ってしまう。

 ――本を読まない人はどんな理由がありますか?

 H 忙しいから、時間がないからというのが大きい。大学の課題などに追われている。また動画の視聴などに時間を費やしている。

小学生が授業前に好きな本を読む「朝の読書」の様子。こうして養われた読書習慣も、スマホに取って代わられるケースが多いのかもしれない(記事には直接関係ありません)

読書に割く時間がない

 ――小中高生時代よりも読書量が減っているという人はいますか?

 F 減った。高校生の時は月に30冊は読んでいたけれど。通学の電車内などでスマホを見ている時間が増えたことが大きな原因だ。

 H 私も減った。以前に比べて付き合いが増え、自分だけの時間を取ることが難しくなったことが理由だと思う。スマホがあればいつでも連絡が取れてしまう。通知が来ると気が散って読書に集中できないから。

 ――読書習慣を取り戻すにはどうすればいいでしょう?

 E 極論だが、スマホを使う時間を減らせばいいと思う。あえて携帯式の充電器を持っていかないとか、満タンに充電しないというのも一つの手。

 H 僕はそもそも読書習慣がどうしても必要なものか疑問に思う。読書しなくても生活は送ることができるし、読書以外でも情報は得られる。

 B 私は読書を付加価値的なものだと思っている。日々の生活に読書をプラスするという感覚。

悲観すべきことではない?

 ――読書離れを深刻に受け止める声もありますが、どう思いますか?

 G 深刻にとらえることにかえって違和感がある。読書はあくまで趣味の一つという認識。

 F 国語力の低下が心配されているようだが、国語の授業で基礎的な国語力は身につく気がする。悲観することではない。

 E 私も読書しないことが一概に悪いことだとは思わない。でも、幼いころから本を読まなかったために、今になって文章を読むことに苦痛を感じる人もいるのではないか。私の弟がそうだから。読書習慣の欠如が集中力の低さにつながるのかも。

 H 確かに、本は自分の意思で読むことが求められる。だから、集中力とか忍耐力はつくと思う。

周りの目が気になる?

 ――ところで皆さんの大学ではどれくらいの人が読書をしていますか?

 H 僕の大学ではほとんど見かけないな(笑い)。

 G 自分の大学でも読んでいる人は少ない。正直、周りの目が怖くて読めない。

 ――それはどういうことですか?

 G 自分だけ本を読んでいると目立ったり、「意識が高い」と敬遠されたりしそうで……。そう思われるのが怖い。

 B 分かる。周囲に本を広げている人がいない場所だと読みにくさがある。

 D 私には分からない。専攻が日本文学だから日常的に読んでいる人はたくさん見かける。周りの目は気にしたことがない。

10月7日に閉店した川崎市中原区の住吉書房元住吉店。長年地域社会で愛された書店が今、次々と閉店している(記事には直接関係ありません)

消える「出合い」の場

 ――書店も数を減らしていますが、どう感じていますか?

 B 書店という場所自体が好き。タイトルをざっと見るだけでも楽しいし、気になった本を手に取れば興味関心の幅が広がる。周りの客がどんな本を手に取っているのかを見たりするのもおもしろい。今ある書店には残ってほしい。

 E 私も同じ気持ち。用事がなくても気軽に足を運べる空間。

 C 本はネットで買えるから、書店の減少が生活に支障をきたすことは無い。ただ、本屋で偶然出会う本もあるからさみしい。

 A 私は立ち読みで面白そうだと思ってもその場で買わず、口コミを確認してネット上で買う。せっかく買って内容が期待外れだったら悲しいから。ネットで購入するとポイントが付いたり、送料無料だったりする。だから、本選びで書店に足を運ぶけど、本の購入という形で貢献できてないな。

 D 自分は本を買う時にコストパフォーマンスは考えない。今、楽しめなくても時間がたって楽しめるということもあるから。

タブレットで電子書籍を読む子どもたち。読書のスタイルは多様化している(記事には直接関係ありません)

多様化する読書の形

 ――本の要約サービスや読み上げサービスを使ったことはありますか?

 H 要約サービスは使ったことがないが、読み上げサービスは使ったことがある。通学時間が長いので、倍速で聞くと1日で本を1冊聞き終えることができる。プロのナレーターの音声だと内容が頭に入ってくる。

 F 私も読み上げサービスは使ったことがある。ただ、馬耳東風というか、内容が頭に入ってこない。目から情報が入ってくる人と、耳から情報が入ってくる人で分かれるのかもしれない。

 C どこまで読書といえるか分からないが、最近は短い尺の動画をシェアできるTikTokで短編小説が流れてきたり、小説の一節がBGMに入っていたりする。読み上げサービスや要約サービスもそうだが、読書のスタイルが多様化しているのではないか。

 ――ありがとうございました。

<参加学生のプロフィル>

A=文学部2年生

B=文学部3年生

C=社会学部3年生

D=人間文化学部3年生

E=キャリアデザイン学部2年生

F=文化構想学部4年生

G=文芸学部4年生

H=国際関係学部3年生

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