現職警察官3人が証人出廷した弁論後の記者会見に臨む大川原化工機の大川原正明社長(左から2人目)ら=東京都千代田区で2024年10月9日、春増翔太撮影

 化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件を巡り、社長らが東京都と国に賠償を求めた訴訟の控訴審第2回口頭弁論が9日、東京高裁で開かれ、証人として出廷した警視庁の男性警部補が「捜査に問題があった」と証言した。公の場で捜査を批判した警視庁の現職警察官はこれで3人目となり、極めて異例の事態となった。

 「1審の2人に続き、3人目も正直に話してくれた」。国賠訴訟控訴審の口頭弁論後の記者会見で、大川原化工機の大川原正明社長は、捜査批判をした男性警部補の証言を評価した。

 会社側は控訴審で、警視庁公安部が作成した経済産業省の担当者との打ち合わせメモの写しを新たな証拠として提出した。

 省令の規制基準があいまいなことを理由に捜査に難色を示していた経産省が、公安部の家宅捜索に協力的になっていく経緯が記されており、捜索で別の容疑を見つけてほしいという経産省側の要望や警視庁幹部の働きかけをうかがわせる記述もあった。

 証人尋問で、会社側代理人の高田剛弁護士がメモを基に、「ガサ(家宅捜索)することの密約ではないか」と捜査批判をした警部補に尋ねた。警部補は「その通りです。恥ずかしい相談。法令を無視しているような話です」と証言。逮捕についても「捜査の決定権を持っている人の欲だった」と語った。

 ただ、証言した現職警察官3人のうち、2人は捜査は適正だったとの立場だった。元顧問の相嶋静夫さんを取り調べた警部は、謝罪の意思を問うた相嶋さんの長男に「謝罪はありませんが、お悔やみ申し上げます」と述べた。元取締役の島田順司さんは「失望した。組織の圧力に負けず、真実をありのままに話してほしかった」と肩を落とし、大川原社長も「こういうことが繰り返されないよう謝ってほしかった」と訴えた。【遠藤浩二】

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