化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件を巡り、社長らが東京都と国に賠償を求めた訴訟の控訴審第2回口頭弁論が9日、東京高裁(太田晃詳裁判長)で開かれ、証人として出廷した警視庁の男性警部補が「立件するような理由はなかった」と証言した。
大川原化工機の国賠訴訟では、1審・東京地裁の審理で別の警部補2人が「(事件は)捏造(ねつぞう)だと思う」「マイナス証拠を取り上げなかった」などと証言している。公の場で捜査批判した現職警察官はこれで3人目となり、極めて異例の事態となった。
事件では、大川原正明社長(75)▽元顧問の相嶋静夫さん(享年72)▽元取締役の島田順司さん(71)――が軍事転用可能な装置を不正輸出したとして外為法違反に問われ、2020年3月、警視庁公安部に逮捕、東京地検に起訴されたが、21年7月に起訴が取り消された。
1審・東京地裁判決(23年12月)は捜査の違法性を認め、国と都に約1億6200万円の賠償を命じ、双方が控訴していた。
控訴審で会社側は、公安部が経済産業省の輸出規制省令を独自解釈して、大川原化工機の装置が輸出規制の対象になるとみなし、立件に踏み切ったと主張。公安部と経産省の打ち合わせが記載されているメモを証拠提出し、「公安部が経産省に不当な働きかけをした」と訴えている。
9日の尋問で捜査批判をした警部補は、事件着手前の公安部と経産省の打ち合わせに同席していた。
警部補は一連の捜査が「幹部の欲」で強行されたと説明。公安部の解釈は警察内部で作った理論で業界では採用されていなかったとの見解を示した。打ち合わせメモの内容も認め、「捜査には問題があった」と述べた。
9日は、被告の立場のまま病死した相嶋さんを取り調べた男性警部と、島田さんの取り調べに立ち会った男性巡査部長も証人出廷した。両警察官は捜査に違法性はなく、適正だったと証言した。【遠藤浩二、春増翔太】
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