北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没して乗員乗客全26人が死亡・行方不明となった事故で、釧路地検は9日、運航会社「知床遊覧船」の社長、桂田精一容疑者(61)=北海道斜里町=を業務上過失致死罪で起訴した。海難事故で、操船に直接かかわっていない運航会社社長の刑事責任を問うのは異例。
桂田被告は同日、弁護人を通じ「多くの乗客の方、船員に犠牲を生じさせてしまったこと、また依然として行方不明の方々もおられることについて、法人代表者としてこれからも謝罪と償いを続けていく」とのコメントを発表した。
地検によると、桂田被告は2022年4月23日、荒天が予想される中、安全統括管理者、運航管理者として出航見合わせや航行中止を指示するなどの注意義務を怠り、午後1時20分過ぎごろにカズワンを沈没させ乗員乗客を死亡させたとしている。地検は認否を明らかにしていない。
同社が海上運送法に基づき作成した運航基準では、風速8メートル以上、波高1メートル以上の場合に出航中止と定めていた。事故当日の予報では風速15メートル、波高2~2・5メートルとされ、付近の海域は約3度と低水温だったことから、地検は桂田被告には転覆、沈没などで乗客らが死傷する事故の予見可能性があったと判断した。
第1管区海上保安本部は9月、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで桂田被告を逮捕、送検したが、地検は業務上過失致死罪のみ適用。また事故で死亡し、同容疑で書類送検された豊田徳幸船長(当時54歳)は不起訴処分とした。
事故を巡っては、乗客の遺族ら29人が、運航会社と桂田被告に計約15億円の損害賠償を求め、札幌地裁に集団提訴している。【後藤佳怜、本間浩昭】
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