職員からの情報提供をきっかけに、イット!が連日取材を続けている「見捨てられた老人ホーム」問題。
これまで、東京都内や千葉市などで同じ運営会社が展開していた老人ホームの職員が入居者たちを残して一斉退職した問題を独自取材してきた。
追跡取材第4弾として、社長が給与支払いの遅延を説明した際の音声を独自入手。経営の実態を知るキーマンにも直撃した。

「見捨てられた老人ホーム」から泣く泣く退去の高齢者

8日午後2時半頃の千葉市内にある老人ホーム。

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施設の中から車に荷物を運び出す様子がみられた。

9日に退去する入居者の家族:
いきなり閉鎖っていうこと聞かされて、こっちもびっくりしちゃって、(10月)10日までに出なきゃいけないっていう話だったので…。

9日に退去する入居者の家族:
おむつ交換してない、お風呂にも2週間ぐらい入ってない…。

入居者する高齢者は突然、10日で“食事の提供打ち切り”が告げられ、退去を求められていた。

入居者の家族:
今日(8日)引っ越しで、他の受け入れ先を見つけていただけたから良かったけど、まだ受け入れ先が見つかってない人がたくさんいます。

スタッフもまばらでひっそりとしている施設内

その施設内で撮影された映像を見ると、スタッフもまばらで、ひっそりとしている様子が分かる。

おむつのようなもの床に落ちていたり、ごみ箱も満杯になっていたり、雑然としている室内

室内は掃除が行き届かないのか、おむつのようなもの床に落ちていたり、ごみ箱も満杯になっていたり、雑然としていた。

入居していた女性:
(スタッフは)とっても優しくてね。良くやってくださいました。
ご自分のお財布からね、100円玉10円玉を出して、「ドリンクでも何でも飲んでください」とかね、買ってくださったりとか…。

社長の居場所突き止め直撃も…「法務対応」の一点張り

職員からの情報提供をきっかけに、イット!が連日取材を続けている「見捨てられた老人ホーム」問題。

元職員:
(職員は)「帰りの交通費も足りない」って言ってた方もいるし、「家賃払えないからどうしよう」っていう声はいっぱい聞きます。

東京都内や千葉市などで同じ運営会社が展開していた老人ホームの職員が入居者たちを残し、一斉退職した。

その原因は“給料の未払い”。
姿を消した運営会社社長が群馬県内にいることを突き止め、取材班が直撃した。

ーー感情的に「申し訳ない」とか「心配だな」とかはありますか?
運営会社社長:
ここに関しても、本当に現状としては法務対応なので、もう弁護士の方と話をして法務対応でやっていこうと思っております。

社長は何を質問しても、“法務対応する”との一点張りだった。

給与支払い遅延を説明する音声データ入手

そんな中、取材班が入手したのが、7月に社長が職員らに給与支払い遅延を説明する音声データだ。

音声データ(7月)社長:
ちょっとお給料の支払いの方が遅れてしまったということに対しましては、申し訳ないと思いました。
実は自分がこれを知ったのが、3日前に経理の方から話をもらいました。銀行のネットバンキングの残高ですとか確認しまして、確かにこれはマズいよね、というところで…。

この時の社長の印象について、元職員は振り返る。

元職員A:
(説明会)聞いていた立場からすると、「その場しのぎの回答なのかな」っていう点と「本当に知らないんだな、この人は」っていうところ、この二つを感じましたね。

そして詫びる社長に対し、職員らが詰め寄る。

音声データ(7月)職員:
今どのくらい赤字かご存じですか?
音声データ(7月)社長:
ざっくりは把握しております。ただ正確な数字までは把握できていない。

音声データ(7月)職員:
長年介護職やってますけど、ここまで酷いところって初めてなんです。
音声データ(7月)職員:
今後も施設運営は続けていくというお考えですか?
音声データ(7月)社長:
そうです。

その後にまとめられた関係業者への支払い状況を記した資料を見ると、2023年7月に運営する最初の施設がオープンして以来、全ての月が赤字だったことが発覚した。

なんと、総額6億円近い未払いがあったことが明らかになった。

元職員は離職票がもらえず、失業手当も支給されない中、今はハローワークに通っているという。

元職員:
子供が産まれて育休取ろうとしていたんですけど、この有様で取れなくなっちゃって。
今、僕は職があるのかすらもよく分からない状態です。

経営の実態を知るキーマン直撃“資金がなかった”

オープンから1年足らずの老人ホームで何があったのかーー。

イット!は、経営の実態を知るキーマン、かつて運営会社の取締役にも名を連ねていたジェイマットジャパン合同会社・大下甚代表を直撃した。

ーーなぜ破綻した?
ジェイマットジャパン合同会社・大下甚代表:
一番の原因は“資金がなかった”。運転資金を持っていなかった。
資金が足りないとか、そういったお金の話が出てくるようになったのは、2023年の12月ぐらいですかね。

この証言によると、資金が足りないことが発覚する中で、新たな施設をオープンし続けたことになる。

ーー現在の状況は?
ジェイマットジャパン合同会社・大下甚代表:
衛生状態も最低限ですね。
デッドラインとしては、10月10日まで食事を出すのがもう限界。

現在は、大下氏が経営する会社から派遣した看護師らが施設に残された高齢者のケアにあたっているという。

では、高齢者施設を選ぶ際には、どのような点に気をつければいいのかーー。

「LIFULL介護」編集長・小菅秀樹さん:
必ず3件は(施設を)見て欲しいと思っています。
周辺相場と比べて、明らかに安い施設。ここは注意した方が良い。
空室が多い可能性があったり、入居者が集まらない何らかの理由があることが考えられる。

高齢者施設を選ぶ際には、料金の安さだけで決めるリスクがあることを知っておきたい。
(「イット!」 10月8日放送より)

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