参院本会議で旧優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者らを救済する補償金支給法が可決、成立し、傍聴席で涙を拭う尾上敬子さん(右上)と夫の一孝さん=国会内で2024年10月8日午後5時39分、平田明浩撮影

 今日は新しい出発点――。旧優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者らを救済する補償金支給法が8日、参院本会議で可決、成立した。国家賠償請求訴訟の原告や弁護団からは喜びとともに、一刻も早い救済や障害者差別の根絶を求める声が上がった。

 8日午後5時40分ごろ、補償金支給法が全会一致で可決されると、傍聴席で見守っていた原告の北三郎さん(81)=活動名=は小さく頭を下げた。北さんは「心残りが晴れた」とほっとした表情を浮かべる一方、「人生は帰ってこない。二度と同じ悲劇を繰り返してほしくない」と訴えた。

旧優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者らを救済する補償金支給法が可決、成立した参院本会議を傍聴する北三郎さん(左)=国会内で2024年10月8日午後5時39分、手塚耕一郎撮影

 被害者の多くが高齢化し、障害を抱えている。最高裁による7月の違憲判決までに6人の原告が死去した。参院本会議を傍聴した原告の一人、尾上敬子さん(74)は「(成立時は)涙が出たが、国にはもっと早く動いてほしかった」と振り返る。全国弁護団の新里宏二共同代表も「ずいぶん時間をかけてしまった。全体の被害救済の第一歩はこれから。国による被害者へのきちんとした謝罪とともに、『是非利用してほしい』という姿勢での補償制度の周知が求められる」と語った。

 今後は再発防止施策の推進も求められる。訴訟を支援してきた「優生保護法問題の全面解決を目指す全国連絡会」の藤井克徳共同代表は「優生思想を含む障害者差別は簡単には消え失せない。被害者救済とともに徹底した調査検証が必要だ」と指摘した。【塩田彩、阿部絢美】

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