スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2024年のノーベル物理学賞を米プリンストン大のジョン・ホップフィールド名誉教授(91)とカナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授(76)に授与すると発表した。
2人は人工知能(AI)の基礎となる技術開発に貢献。「人類は道具箱の中に新しいアイテムを手に入れた。機械学習は日常生活に革命をもたらしている」と評価された。
現在、新素材の開発など幅広い分野で活用されるAIは、人間の脳の構造にヒントを得て開発された。
2人は1980年代以降、脳の神経細胞で刺激が伝わる仕組みをまねて、コンピューター内に情報処理のネットワークを構築する「人工ニューラルネットワーク(神経回路網)」の基礎を築いた。
ホップフィールド氏は、画像処理に関する独自のプログラムを開発。画像をゆがませたり不完全に見えたりする状態で入力した場合でも、このプログラムで処理することで、学習した画像の中から、ゆがみなどのない最も似ている画像を見つけられるようにした。
ヒントン氏は、ホップフィールド氏のプログラムを発展させて、学習能力や情報処理能力を持たせることに成功し、85年に発表した。例えば、人間は友人の兄弟に初めて会った時、すぐに友人と関係があるに違いないと認識できるが、プログラムに同じような判断ができる能力を与えた。
ヒントン氏は、約50年にわたってAIの研究に従事し、機械が自分で学習する「深層学習(ディープラーニング)」の基礎を築き、「AI研究のゴッドファーザー」と呼ばれる。米グーグルで製品開発にも携わり、副社長も務めたが23年5月、AIの危険性を訴えるために退社した。
AIは近年、チャットGPTに代表される対話型AIへの発展や、創薬など医療分野での利用や新素材の研究開発への応用が進んでいる。
AIを活用して物理学を研究している京都大の橋本幸士教授(学習物理学)は「ノーベル賞はこれまで自然現象の説明や自然法則の予言に対して与えられてきたが、AIへの物理学の応用が爆発的な成功の基盤となったことに対して賞が与えられることを称賛したい。AIの発展の基礎に物理学があることを多くの人に知ってほしい」と語った。
授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれ、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億6000万円)が贈られる。【鳥井真平、藤沢美由紀、寺町六花】
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