1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われ死刑が確定した袴田巌さん(88)に対するやり直しの裁判(再審)の静岡地裁・無罪判決(9月26日)について、検察当局は8日、控訴を断念すると発表した。
畝本直美検事総長は談話を出し、静岡地裁の無罪判決について「大きな疑念を抱かざるを得ず、捜査機関の捏造(ねつぞう)を断じたことは強い不満を抱かざるを得ない」と指摘。その上で、「袴田さんが結果として相当な長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことに思いを致した」とした。
検察側が上訴権を放棄するか、控訴期限の10日が過ぎれば、無罪が確定する。
死刑囚に対する再審無罪の確定は戦後5件目となる。逮捕から58年を経て、袴田さんは「死刑囚」の立場から完全に解放される。
静岡地裁の無罪判決は、事件の捜査で「三つの捏造があった」と認定した。検察内部では控訴すべきだとする意見もあったとみられるが、無罪を覆すのは困難だと判断した模様だ。【安元久美子】
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