通行料の支払いを確認後、次々と出発する大勢の登山者ら=山梨県の富士山吉田口5合目で2024年7月1日午前11時50分、手塚耕一郎撮影

 富士山の山梨県側登山道「吉田ルート」で、県が今夏から登山者に支払いを義務付けた通行料2000円について、長崎幸太郎知事は、値上げを検討すると明らかにした。規制や安全対策にかかる県の負担を軽減し、同ルートを利用する国内外の登山者に負担を求めていく。【野田樹】

 長崎知事は、1日の県議会代表質問で入山規制の費用負担について問われ、「必要な費用を精査し、引き上げを視野に見直す」と答弁した。具体的な値上げ額には触れなかった。週末に集中する登山者を分散するため、通行料の変動制も検討する。

 県は、吉田ルート5合目にゲートを設置し、通行料のほか、午後4時~午前3時の山小屋宿泊者や下山者以外の通行を制限するなどした。

 県富士山保全・観光エコシステム推進グループによると、安全対策などを含め今夏の規制の経費は約3億8000万円。登山者が支払った通行料と任意の富士山保全協力金(1000円)は計約3億6000万円で、県が差額の約1700万円を負担する見込みだ。2023年には、安全対策などで約1億7000万円かかり、協力金分を差し引いた約7000万円を県が負担した。

 長崎知事は、通行料の徴収で「県民負担が軽減され、富士登山における費用負担のあり方を大きく変えることができた」と述べた。

 また、県は夜通し山頂を目指す「弾丸登山」とみられる登山者がゲート閉鎖(午後4時)の直前に入山したケースがあったことを受け、閉鎖を早める検討も始める。来季の通行料導入を目指す静岡県や、吉田ルートの関係団体の意見を聞き、規制の見直しを進める。

 環境省によると、7~9月の開山期間中、山梨、静岡両県にある4ルートの登山者は計20万4316人。吉田ルートが最多の約11万5000人だった。

協力金支払い率に影響

 富士山の今夏の開山期間中、任意の富士山保全協力金(1000円)を支払った登山者の割合が、山梨県側で53・1%(前年比22・5ポイント減)と、制度開始から2番目に低かったことが県のまとめで判明した。県は、通行料(2000円)を導入した反動で大幅に減少したとみて、協力金と通行料の統合を検討している。

 県によると、協力金を支払ったのは6万957人。環境省の集計した登山者数を基に協力率を算出した。総額は6092万790円で、前年比4000万円以上減少した。一方、通行料として約3億円を徴収した。

 県は今夏から実施した入山規制で、登山者数を事前に把握し、通行料の支払いによる混雑を防ぐため、通行料と協力金を事前決済できる予約システムを導入。事前予約者のうち、協力金を支払ったのは25・5%にとどまった。担当者は「事前決済では協力金の趣旨がうまく伝わらず、支払いを敬遠された可能性がある」と話した。

 協力金は山梨、静岡両県にある四つの登山ルートで2014年に本格導入し、環境保全や安全対策に充てている。通行料を徴収していない静岡県側の今夏の協力率は、過去最高の74・3%(前年比0・8ポイント増)に上った。【野田樹】

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