関西の住みたい街ランキングで常に上位に入る兵庫県西宮市で、駅周辺の客引き行為が問題となっている。塾通いの子どもたちや通勤・通学の市民に配慮し、県は早ければ5月1日にも、市内2駅の周辺道路を客引き行為の禁止地区に指定しようと調整を進めている。
「早い時は午後5時から客引きの男女が10人ぐらい並んでいる」。阪急西宮北口駅の北西にある「にしきた商店街」会長の矢田貝充彦さん(80)によると、10年ほど前からガールズバーや飲み屋の客引きが目立ち始めた。特に多いのが南北の通り約130メートル。奥まった場所にある店舗へ客を呼び込もうと、表通りに立ち並んでいるとみられる。
駅周辺は100カ所以上の塾と飲食店などが混在してにぎわう一方、少し歩けば静かな住宅地が広がる。駅前を利用するのは通勤・通学の市民や塾通いの子どもたちが多い。地域住民や保護者らから「怖い」「威圧感がある」などの声が上がり、商店街は自主的な見回りや看板で対策してきた。JR甲子園口駅前でも2020年ごろから客引きの増加が問題になってきた。
県は15年4月、県内全ての公道を対象に、断ってもつきまとったり立ち塞がったりする悪質な客引き行為を禁止する条例を施行。同年10月には神戸市の要請に基づき、中央区の阪急神戸三宮駅北側(山手幹線とトアロード、県道神戸明石線、フラワーロードに囲まれたエリア)をより厳しく規制する「客引き行為等禁止地区」に県内で唯一、指定した。
禁止地区は「特に快適な環境を確保する必要がある」とされ、通常の客引きや勧誘なども禁じられる。県の指導員が見回り、24年3月末までに5万円以下の過料を科された違反者は119件、命令に従わず違反を繰り返し店舗名を公表されたケースは53件あった。県の調査では、地区内の客引きの数は条例制定前と比べて約3割減ったという。
西宮市内では三宮ほど悪質な客引きは確認されていないが、市は地域の要望を受け、石井登志郎市長が県に対し、阪急西宮北口駅の北西側とJR甲子園口駅前南側の指定を要請。斎藤元彦知事は11日に現地を視察し「三宮の状況とは違うが、事態が悪化しないよう未然に防ぎたい」と指定を急ぐ考えを示した。
矢田貝さんは「指定されて終わりではなく、市や住民と協力して見回りや看板設置など安心な街に戻せるよう頑張りたい」と話している。【稲田佳代】
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