各地の災害を語り継ぐ施設や活動を地域の防災力向上につなげてもらおうと、内閣府と国土交通省が創設した認定制度「NIPPON防災資産」に四国から3件が選ばれた。より上位の優良認定は防災ツーリズム(高知県黒潮町)と四国防災八十八話マップ(四国防災八十八話・普及啓発研究会)の2件、認定は乙亥会館災害伝承展示室(愛媛県西予市)の1件だった。
愛媛県西予市野村町地区は2018年7月の西日本豪雨で肱(ひじ)川が氾濫し、5人が死亡するなど大きな被害があった。同市は20年にまちの歴史や被災状況、復興への歩みを伝える防災教育の拠点として災害伝承展示室を整備。地元の語り部団体「語り部018のむら」による案内もあり、地域を挙げた取り組みが評価された。
5日、展示室前で認定式が開かれ、国交省肱川ダム統合管理事務所の清水敦司所長は「引き続きこの資産の価値を高めてもらい、地域の防災力向上に向けてけん引していただきたい」と期待を述べた。語り部団体代表の三瀬佳代さん(76)は認定に感謝を示し、「今後の課題はいかに若い人につないで、長く語り継げるか。認定を機に更に若い世代にアプローチしていきたい」と語った。
優良認定となった高知県黒潮町の防災ツーリズムは、防災教育と観光を組み合わせた取り組みだ。同町は南海トラフ巨大地震の被害想定で全国で最も高い34・4メートルの津波が襲うとされている。防災への意識が高い同町で夜間避難訓練などを組み込んだツアーを体験してもらうことで、参加者に自ら考え行動する力を身に付ける場を提供している。また、「四国防災八十八話マップ」は、四国で過去にあった災害に関する言い伝えや教訓を地図上にまとめて紹介。ウェブサイトでも公開されていて、地域の防災学習などに役立てられている。
創設後、初の認定となった防災資産。全国から140件の応募があり、優良認定と認定は各11件だった。【山中宏之】
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