被爆地・ナガサキからは核兵器廃絶や平和を訴える様々な活動が行われている。しかし活動をけん引してきた被爆者は高齢となり、活動を引き継ぐ人たちも不足する中、平和活動を持続的なものにするため、学生たちが新たな発想で平和活動に取り組んでいる。
飲食店でTシャツ販売 一体なぜ?
長崎市平和町にある飲食店「Sunny Luce」。卵料理の専門店だが、店の片隅にはTシャツが売られている。
この記事の画像(11枚)Tシャツは少し大き目に作られていて、ゆったりとした着心地だ。デザインは鉛筆で描いたような柔らかなデザインで、4羽の折り鶴の顔にはネコや龍踊の龍など長崎らしいものが描かれている。長崎の学生たちが立ち上げた「長崎ピース」というブランドのシャツだ。
MICHISHIRUBE 長崎大学2年 森琴絵さん:長崎ピースブランドとは長崎の魅力を平和と共に発信するコンセプトで、長崎の新しい平和のお土産を作りたいと思っている。
ファッションブランド「長崎ピース」は、2024年5月に県の内外の大学生でつくる学生団体「MICHISHIRUBE(みちしるべ)」が立ち上げた。平和活動の資金を確保するのが狙いだ。
MICHISHIRUBE 鎮西学院大学 3年 大澤 新之介 代表理事:お金という現実に向き合うために平和ビジネスという言葉を大きくしてやっている。
MICHISHIRUBEの代表、鎮西学院大学3年の大澤 新之介さんは、高校生平和大使を務めた経験もある。大澤さんは活動を続けていく上で「資金」が大きな課題になると感じている。
被爆者団体の活動資金不足
長崎市の被爆者団体・長崎原爆被災者協議会は被爆者の援護を国に求めたり、核兵器廃絶を求めるといった活動を続けてきた。
交通費や事務所の維持費などにかかる年間1千万円の経費は、寄付や会費でまかなってきたが、ピーク時に数万人いた会員は約2千人まで減っていて、活動をどのように維持するかが課題になっている。
長崎原爆被災者協議会 田中重光 会長:節約しながら使っているが最低の経費はいる。(被災協の)会館だけでも水道料・電気代・修繕費。(年間)100万もださなければいけない。本当に困っている
活動資金・担い手不足の解消に向けて
MICHISHIRUBEは2025年の被爆80年に向けて、被爆者の証言をSNSに投稿して被爆の実相を若い世代に伝えている。動画制作のための交通費や編集ソフトの購入費用などは「長崎ピース」の販売で得た収益をあてている。
MICHISHIRUBE 大澤新之介 代表理事:ガソリン代、交通費がかかっている。1日動いただけでも1000円以上はする。これでお金が補助されることになればハードルが低くなる。自分もやってみる一歩が出る。
しかし、平和活動をビジネスにすることには反対の声もあったという。
MICHISHIRUBE 大澤新之介 代表理事:平和活動は心でやるもの。決してお金をもらってやるものではないという方もいる。平和活動が持続可能なものではないことが見えてきている。なくなる前に持続可能にするための手段を用意するべき。
この日は長崎市の茂木中学校の生徒たちと平和をテーマに作った歌を、どうすればインターネットで見てもらえるか話し合った。面白さを見つけてもらい興味を持ってもらうことで担い手が増え、平和活動を持続可能なものにできると考えている。
茂木中学校3年 濱口晃実さん(※「濱」は「まゆはま」):楽しいのが一番だと思う。
茂木中学校3年 橋浦乃ノ佳さん:協力してくれて私たちの歌が広まったらうれしい。
MICHISHIRUBEが進む道は
活動の輪が広がり、MICHISHIRUBEは20人にまで増えた。ファッションブランド「長崎ピース」もおよそ100万円を売り上げるまで成長した。
商品を購入した人:思いを繋げていくには資金もいるし、色んな人の力が必要。自分が役にたつならいくらでもという気持ちでいる。
活動を見守る被爆者も期待を寄せている。
被爆者 田中安次郎さん:素直な気持ち、謙虚な気持ちで平和を引き継いで活動しようとするから手伝わなければいけない。
MICHISHIRUBE 大澤 新之介 代表理事:自分たちの活動はお金が集まればいいという話ではない。お金が集まることで次の新しいことを生み出すことができるという活動。被爆者がいるうちに姿勢を見せられれば。
ビジネスの幅を広げようと、団体の法人化にも着手した。
平和活動を持続可能なものにー。MICHISHIRUBEの挑戦は続く。
(テレビ長崎)
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