平和祈念像に向かって手を合わせる人=長崎市で2024年8月9日午前5時58分、金澤稔撮影

 9日に長崎市であった平和祈念式典で、市はウクライナへの侵攻を続けるロシアと、支援するベラルーシを招待せず、パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルについても、「不測の事態が発生するリスクへの懸念がある」として招待しなかった。これに対し、主要7カ国(G7)のうち日本を除く6カ国と欧州連合は大使が欠席し、代わりに公使らが参列した。

 市の判断や米欧の対応に対し、平和祈念式典に参列した市民や被爆者らの間でも意見は分かれた。

 被爆2世の樫川和憲さん(77)=長崎市=は「戦争をしかけている国をここに招くのはそぐわない。イスラエルには来てほしくない。それに反発して米国の大使らが参加しないことには不満を感じる」と語った。

 一方、爆心地から約7・5キロで被爆したという山口直子さん(80)=長崎市=は「どこの国も平等に招待すべきだ。今の戦争とは切り離して原爆で犠牲になった人を慰霊すべきだ」と話した。東京から参列した八木初音さん(85)は長崎で被爆し、母やきょうだいら家族5人を亡くしたといい、「難しい問題だが、イスラエルは招待した方が良かったと思う。(米国の大使らも)長崎に来て、戦争が起きたらどうなるか、知ってもらった方が良い」と語った。

 東京大の石田淳教授(国際政治学)は「平和祈念式典は、核兵器が人間の尊厳を踏みにじるものだと改めて思いをいたす場だ。イスラエルのガザ地区への攻撃について長崎市長は即時停戦を求める書簡を送っている。人間らしく生きることを許さない事態が再び繰り返されている以上、招待しないのは理解できる」と語った。そのうえで、「米国はイスラエルにとって最大の軍事援助国だ。米国内での批判もある中、人権侵害国への軍事援助を禁じた国内法に違反しているという疑念が生じることは、政権として何としても避けたいところだ。今回の米側の対応はイスラエルの問題がいかにセンシティブであるかを如実に表している」と指摘した。【尾形有菜、松本美緒、百田梨花】

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