改修して玉締め圧搾法の機械を移設することを目指す古民家の土倉=福島県喜多方市で2024年7月10日午後4時32分、錦織祐一撮影

 伝統製法「玉締め圧搾法」で絶品の菜種油を作っていた福島県会津若松市の老舗が、後継者難で2022年に廃業した。喜多方市高郷町に移住して天然にがりの豆腐店を創業した小原直樹さん(65)が「あまりにも惜しい」と一念発起、受け継ごうと修業を重ねている。【錦織祐一】

 会津若松市の「平出油屋」は1841(天保12)年創業で、6代目の平出祐一さん(77)がのれんを守ってきた。玉締め圧搾法は菜種やゴマを低圧で時間をかけじっくり搾る伝統製法で、機械は現在製造されていない。

 油分以外にも栄養成分が抽出され、菜種油はアブラナの黄色に輝く。市販の油に比べてくせがなく鮮度も落ちにくいので、継ぎ足して使っても香りが持続する。油揚げや厚揚げは香ばしく、煮物にすると油がうまみを増すので「油抜きなんて、もったいなくてできません」と小原さん。

平出祐一さん(右)から玉締め圧搾法を教わる小原直樹さん=小原さん提供

 平出油屋の菜種油には全国各地に根強いファンがいた。小原さんも東京の広告代理店を脱サラして会津の地にほれ込み移住、00年に夫妻で豆腐店「とうふ屋おはら」を創業して以来、平出さんの菜種油を愛用してきた。だが平出さんが体調を崩して廃業を検討し、小原さんが弟子入りして技術を学んできた。

 平出さんは22年12月に惜しまれつつ廃業。機械一式は小原さんに譲渡する。移設先は、大和川酒造店(喜多方市)の佐藤弥右衛門会長から、イベントなどに使っていた築150年の古民家を紹介された。新たな工場とする土倉は老朽化しているため、改修や移設などの費用をクラウドファンディングで31日まで募っている。

 小原さんは地元・会津の契約農家が育てた在来種の大豆と、長崎・五島列島産の天然にがりを使った豆腐作りで高い評価を得る。「私も子がおらず、新たな工場では菜種油と豆腐を継承してくれる若い人材を育てたい」と意気込む。平出さんは「自分が思っていた以上に皆さんが油のことを愛してくれていたと実感し、ただありがたいだけです」と感謝している。

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