医師のいない山口県周南市和田地区の高瀬郵便局内に16日、対面とオンラインで診察や治療が受けられる「和田巡回診療所」がオープンした。同地区に医療機関が設置されたのは、2016年2月末に長沼医院が閉院して以来8年ぶり。設置した市によると、郵便局の空きスペースの提供を受け、診療所を開業するのは全国で初めて。オンライン診療などの支援を日本郵便(東京都)に委託する契約に基づき、患者は高瀬郵便局員から通信機器の接続支援などを受ける。【峰下喜之】
診療には、長沼医院の故長沼芳季(よしすえ)院長の孫で、市最北部の鹿野地区にある鹿野診療所の長沼恵滋医師(40)が当たる。県立総合医療センター、岩国市立美和病院勤務を経て22年4月に鹿野診療所長に着任。祖父から学んだ地域医療への責任感もあり、市内四つの巡回診療所も担当してきた。唯一の無医地区となっていた和田で、長沼医師は夢だった長沼医院の継承を果たす思いといい、「安心感を届ける存在になりたい」と抱負を述べた。
毎週火曜に診察室となるのは、高瀬郵便局が普段は相続相談などで使い、プライバシーを保てる個室。第3火曜は長沼医師が出向いて対面で診療する。今月中を除き、第3以外の火曜は予約制で患者に来てもらい、鹿野診療所から長沼医師がパソコンの画面越しにオンラインで問診。処方箋は鹿野診療所から、協力する12の薬局の中から患者指定の薬局にファクスで送る。和田巡回診療所と薬局もオンラインで結び、薬の自宅送付を希望する患者は診療後に服薬指導を受けられる。診療費と薬代は、後日郵送される納付書で金融機関に支払う。
オープン前に和田市民センターで記念式典があり、市から高瀬郵便局に和田巡回診療所の看板が贈られた。日本郵便中国支社(広島市)の砂孝治・支社長は「地域を支える取り組みは経営理念に合致しているので、全国的に発信して進めていきたい」と述べ、医療資源が限られた地域の郵便局に広げたいとした。
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