全国で700人以上、これはマカオのカジノをめぐる架空の投資話の被害者の数です。

総額およそ100億円を集めた巧妙な手口とは。


■架空の「コインリース事業」投資話 合わせて5000万円をだまし取られた男女10人が訴え

11日、大阪地裁に訴えを起こしたのは、架空の投資話でおよそ5000万円の出資金をだまし取られたと訴える、大阪市などに住む男女10人です。

【原告(出資者)】「何でこんなことになったのか、あの金があれば、こんな生活しなくてよかったのに…」

原告から出資金を集めていたのは、マカオのコンサルタント会社「CYC管理有限公司」の代表と取締役の日本人男性です。


2人が持ち掛けた架空の投資話とは…コインリース事業。

出資者たちから金を集め、マカオの高級ホテル「MGM」のカジノで、VIPルームを運営する会社のエージェントなどに資金を貸し付け、得た利益をCYCが出資者に配当する「コインリース事業」という架空の事業でした。

配当金は、毎月1.5%から数%で元本も全額返金のノーリスクとうたっていました。


■カジノのVIPルームで実際に大金が動くのを見て「信用した」 投資開始から5年後には配当が止まった

原告の松田直美さんは、この架空の投資話でおよそ2800万円をつぎ込みました。

【原告(出資者)松田直子さん】「『老後の資金とかをためるんやったら、海外でやる方がいいんじゃないか』と紹介された。父も余命が分かっていた状態で、入院や施設に入っていたんで、その足しにできたらいいというのが、きっけでした」

10年前、保険代理店を介してCYCの投資話を知り、マカオに招待されました。

カジノのVIPルームで多額のお金が動く様子を目の当たりにした松田さんは、その場でCYCと投資の契約を交わしました。

【原告(出資者)松田直子さん】「『こういう世界だ』と言われて、MGMのメンバーズカードも頂いたし、(カジノの)VIPルームはすごいし、ホテルでショーとか見て、信用した」

数年間は配当もあったため追加の投資をしましたが、5年前から突然、配当が止まり、返金にも応じてもらえなくなりました。

そして、CYCとは音信不通に…。


■出資者の追求で 事業自体が架空の投資話であると認める

出資者らが追及すると、CYCの役員の一人は会社の実態についてこう語りました。

【出資者とCYC役員の音声】
【CYC役員】「金貸しですよね。正直、金貸しにお金を投げていたのは確かです」
【出資者】「ポンジ・スキーム(投資詐欺)で、元金崩して配当払ってたわけではない?」
【CYC役員】「正直いうと、元本崩したことはある」

CYCは事業自体が、架空の投資話だったことを認めたのです。


さらに、出資者が入金した際に渡された「MGM」のロゴが入った受領書も、偽造されたものであることが分かりました。

自身も1億円近くを出資し、架空の投資話と知らずに、CYCの依頼で仲介業をしていた男性は「許せない」と話します。

【出資・仲介していた男性】「多くのお客さまに情報提供するきっかけを作ったのは私ですし、情報発信した責任は本当に感じています。真実を暴かなければならない、結論を出さないといけない、じゃないとけじめがつかない」

自身や家族の貯金をほぼ投資に費やした松田さん。
父親の葬儀費も捻出できず、借金をすることになりました。

【原告(出資者)松田直子さん】「一番は返金してもらえることがありがたいけど、返金できないならきちんと罪を償ってほしいと思います」


松田さんら原告10人は、出資金をだまし取られたとしてCYCの代表と取締役に対し、およそ5100万円の損害賠償を求めています。

【代理人 亀井正貴弁護士】「被害者は必ずしも富裕層ではない。一般庶民であり一般消費者です。目的も多くは生活の足し、老後の資金確保で、本件は消費者被害事案」

【原告(出資者)松田直子さん】「ものすごく卑劣やなと思う。生活困難になってるたくさんいると思う。その人のこと考えてちゃんと出てきてほしい」

原告側によると、CYCは全国の700人以上から少なくとも100億円近くを集めていて、詐欺事件としても刑事告訴したいとしています。


■だまされたお金の返金は「ハードルが高い」と菊地弁護士

そもそも事業は架空だったのですが、出資金を集めていたコンサルタント会社の数々の巧妙な手口が明らかになっています。

実際にマカオの有名ホテルに招待し、カジノで多額のお金が動く様子を見せたほか、偽のカジノ事業者のロゴが入った受領書を発行していました。また、元本保証で毎月1.5%の配当金がもらえるとうたっていて、実際、数年間は配当も支払われていました。

被害に遭った松田さんは関西テレビの取材に対し、「VIPルームはすごいし、ショーとかを見て『こういう世界』と言われて信用してしまった」と語っています。

これらの手口について関西テレビの神崎報道デスクは「ものすごく巧妙。投資詐欺でよくあるのは、ネットだけ、電話だけ、書面だけとかがあるが、今回ちゃんと現地に連れて行って、実際に現場を見せている。さらに配当も普通であれば、だいたい1回2回ぐらい振り込まれて、そこから止まってしまうのはよくあるが、毎月しかも数年にわたってずっと配当しているので、これは『こういう投資なんだ』と信じ込ませると。しかも配当が止まったのが、コロナが世界中に蔓延してるタイミングで、『たまたまコロナで止まってるだけです』と説明されて、だまされていたと気付きにくかった」と解説しました。


立ち止まることができず、どんどん被害額が増えていくということになりました。そんな中で、だまされたお金は返金されるのでしょうか

【菊地幸夫弁護士】「なかなかハードルが高いと思います。まずこのCYCというのが海外の法人だとすると、海外の法人に対して裁判を起して、なおかつ勝訴判決をとって、相手が払わなければ強制執行するという所まで行く、法的なハードルはかなり高いわけです。だからそこをどうするかという問題があります。出資と紹介していますが、にもかかわらず元本保証で年率にすると18%ですよね。リスクがないんですよ。出資なのにリスクがない、これはおかしいなあと考えていただきたい。それから、資金を用意するのだったら、もっと大口に依頼すればいいのに、なんで一般庶民の自分のところにそういう話が来たのか。ここもちょっと注意していただきたい。こういう海外投資は、やはり相手が外国に居る、裁判なども大変、色々リスクがありますので慎重に、できればその相手企業のチェックなどできればということで、対処していただければと思います」

海外を拠点にする詐欺事案というのが増えていますから、新しい手口が増える中で、「自分はだまされない」という方ほど、ぜひ注意していただきたいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月11日放送)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。