写真はイメージ=ゲッティ

 インターネット上で、SNS(ネット交流サービス)などで他人を中傷する悪質な投稿が後を絶たない。被害者が刑事罰を求めるケースも少なくないが、投稿者を特定して立件するハードルは依然として高い。

 総務省が運営を委託する「違法・有害情報相談センター」には2023年度、ネット上のトラブルに関する相談が、過去最多の6463件寄せられた。うち約6割が名誉や信用を損なう投稿に関するもので、書き込みの削除や投稿者の特定についての内容が多い。

 22年7月の刑法改正で、拘留と科料のみだった侮辱罪の罰則に「1年以下の懲役もしくは禁錮」と「30万円以下の罰金」が加わり、厳罰化された。公訴時効も1年から3年に延びた。

 捜査に時間をかけられるようになったが、ある捜査関係者は「SNSなどの主要な運営事業者は海外に拠点がある。殺害予告など差し迫ったケースでなければ、なかなか投稿者の情報開示には応じてもらえない」と指摘する。

 22年10月には、SNS事業者に対する情報開示手続きが簡素化された。ただ、ネット上の中傷問題に詳しい佐藤大和弁護士によると、投稿者の情報開示には数カ月を要する場合が多く、裁判所の命令に応じない事業者もいるという。

 今年5月には、SNS事業者などに不適切な投稿への迅速な対応を義務づける「情報流通プラットフォーム対処法」が成立した。佐藤弁護士は「SNS事業者の社会的責任は大きく、悪質な書き込みを減らす取り組みや投稿者情報の適切な開示など、被害者の負担を軽減する姿勢が求められる」と話す。【岩崎歩】

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