愛知県と岐阜県に5月28日、線状降水帯の予測情報が出た。しかし、心配された線状降水帯は発生しなかった。それでも命を守る重要な情報として、かつて雨の被害を受けた農家は「非常にありがたい」と話した。

28日、東海地方を襲った大雨。岐阜県下呂市の飛騨川などで一時、氾濫危険水位を超えたほか、高山市の船山では24時間降水量が278.5ミリとなり、観測史上最多となった。

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一夜明けた29日、高山市の県道では山の土砂が道路に流れ込んだ。

このほか、トンネルの入口に土砂が流れ込むなどの爪痕が残されていたが、ケガ人はいなかった。

気象庁は28日、愛知県と岐阜県に線状降水帯が発生する可能性があると事前に発表しました。

名古屋地方気象台の吉村香気象防災情報調整官(28日):
線状降水帯が発生して、大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性があります。

気象庁は線状降水帯の予測について、より効果的な対策がとれるよう、5月27日から全国を11地区に分けた「地方単位」から「都道府県単位」での発表をスタートした。しかし、今回の大雨では線状降水帯は発生しなかった。

今回の雨について専門家は、“雨は降ったものの、同じ場所で長く続かなかった”という。

岐阜大学応用気象センターの吉野純センター長:
通過した線状の降水というのは確認されたんですけれども、それが前線の通過とともに西から東へ割と足早に抜けて行ってしまったと。

線状降水帯は、暖かく湿った空気が前線や山などにぶつかり、上昇気流を生んで積乱雲に発達する。発達した積乱雲は風に流されるが、同じ場所にまた新たな積乱雲が発達する。この現象が繰り返されることで、長時間同じ場所に雨が降り続き、大きな被害となる。

岐阜大学応用気象センターの吉野純センター長:
皆さんの警戒スイッチを入れるための情報と捉えていただいて、正しく情報を活用していただくことが大事だと思います。

いつ、どこで発生するか予測が難しい線状降水帯だが、23年6月、愛知県三河地方などを襲った豪雨では、事前に予測された線状降水帯が実際に発生した。

豊川市では、線状降水帯が2度も発生し、広い範囲で浸水被害が出た。

愛知県豊川市の農家・小野田泰博さん(45)は23年6月、豪雨で畑が浸水する被害を受け、農作物やトラクターなど約1000万円の被害を受けた。

小野田さんは今回、事前に農業用機械を高い場所に移すなどの対策をしていた。

農家の小野田さん(27日):
雨が降るということだったので、上の方に機械を動かした。

28日、愛知県に線状降水帯が発生する可能性があると発表されると、小野田さんは「日付が変わるくらいまでは警戒しないと危ない」と不安を口にしていたが、結局、今回は線状降水帯は発生しなかった。

それでも小野田さんは「情報が詳しく出ること非常にありがたい」としている。

小野田さん(29日):
天気だけではなくて温度とかはチェックするものなので、そういった情報が詳しく出るということは、農業をやるうえでも非常にありがたい。的確に恐れるというか、警戒する。そうすることで被害は減るんじゃないのかなと。

小野田さんと同様に23年6月の豪雨で被害を受けた、近くのナシ農家・小山和也さんも「空振りであろうとも、情報は欲しい」と話す。

気象庁の想定では、線状降水帯が予測され実際に発生する的中率は4回に1回程度だ。しかし、命を守るためには重要な情報だと専門家は指摘する。

岐阜大学応用気象センターの吉野純センター長:
防災情報や気象情報を我が事として捉えて、避難や行動に移すことができるような情報として、私たちは正しく情報を認識し活用していくことが大事だと思います。

(東海テレビ)

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