鉢によるチチブイワザクラの展示=埼玉県秩父市の武甲山資料館で、2024年4月10日午前、照山哲史撮影

 埼玉県秩父市と横瀬町にまたがる武甲山(1304メートル)だけに自生し、その植物群落が国指定の天然記念物である「チチブイワザクラ」が、武甲山資料館(秩父市大宮)で展示されている。保護活動に取り組む秩父太平洋セメント三輪鉱業所から借りうけた鉢での公開だ。近年は群落での自生も確認されていないといい、同資料館は「希少な植物を観察できるのはこの機会だけ」としている。

 チチブイワザクラは、サクラソウ科で、石灰岩の割れ目や岩棚に自生し、4月中旬から5月にかけて直径2~3センチの赤紫の花をつける。1933年に秩父市の植物学者が発見したとされ、51年に、武甲山北側斜面に自生するチチブイワザクラを含む植物群落が「武甲山石灰岩地特殊植物群落」として国の天然記念物に指定された。

 群落は、秩父太平洋セメントとは別会社の石灰石採掘現場の近くにあり一般には立ち入れない。ただ、横瀬町によると、群落内での自生は近年確認されていないという。イワザクラは国のレッドリストなどで「絶滅危惧種」にリストアップされている。

武甲山資料館に展示されたチチブイワザクラ=埼玉県秩父市で、2024年4月10日午前、照山哲史撮影

 武甲山西側で石灰石採掘を行う秩父太平洋セメント三輪鉱業所が、立ち入り禁止区域にある施設内で約250鉢を管理。温度差や風通しなどに注意し、土の入れ替えなどを行いながら保護に努めている。敷地内でも自生は確認されていない。

 公開は3鉢で、人工授粉のため3日程度で鉢を入れ替える。24日までの午前9時から午後4時(火曜休館)だが、開花状況で短縮の可能性がある。入館料は大人210円、小中学生100円。問い合わせは武甲山資料館(0494・24・7555)。【照山哲史】

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