物価高対策として2022年度に編成された補正予算総額約32兆円のうち、34事業の計1兆4873億円が全額使用されず、23年度予算へ繰り越されていたことが会計検査院の調査で分かった。財政法の規定で緊急性がある場合に限られる補正予算が、規模ありきで組まれていたことが裏付けられた。(石井紀代美、高田みのり)  全額繰り越されていたのは農林水産や文部科学など7府省庁の事業。23年度へ全額繰り越された後、5985億円は支出の必要がない「不用」となった。

◆繰り越し最多は経産省と農水省の11事業

 府省庁別の事業数では経済産業省と農水省がいずれも11で最多。そのうち、21、22両年に発生した福島県沖地震で中小企業の復旧費用を支援する「中小企業等グループ補助金」(144億円)は、翌年度も大半が使われず、61億円が24年度へ再び繰り越された。  経産省中小企業庁の担当者は「新型コロナの影響で資材が入ってこなかったり、人手不足で着工できなかったりして執行が進まなかった」と説明する。

厚生労働省

 厚生労働省の事業では、新型コロナの感染流行を受け、従業員の休業手当の一部を企業に助成する「雇用調整助成金の特例措置等」(226億円)が全額使われず、23年度に不用とされた。厚労省担当者は「コロナの感染状況が落ち着き、休業の必要もなくなったため、申請がゼロだった」と話した。   ◇   ◇

◆「規模ありき」の補正予算、石破政権でも

 かつて数兆円規模で推移していた補正予算はコロナ禍を契機に、金額が一気に膨らんだ。20年度の73兆円を皮切りに、その後も2年連続で30兆円超に。23年度は13兆円台だったが、以前の水準より一桁多い。

国会議事堂

 政治判断で短期間で決まる補正予算は、財務省の査定が厳しいとされる本予算に比べ、予算の上積みを狙う各省庁の思惑が働きやすいとされる。補正の規模は、政治家が金額を示して「やってる感」のアピール材料としても使われてきた。  ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「規模ありきのどんぶり勘定なため、不必要な事業が紛れ込みやすい」と補正予算の特徴を指摘。会計検査院の調査で不要不急が判明した1兆4000億円強については「予算を必要としていた別の事業に回すか、そもそも計上すべきではなかった」と話す。  補正予算が膨れ上がれば、国債発行(借金)依存が強まる弊害もある。ただ、今月中にも閣議決定される24年度補正予算案の金額を巡り、石破茂首相は編成前から前年を上回る13兆円超にする考えを明示。規模ありきの姿勢は新政権でも変わっていない。 

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