ふるさと納税の返礼品として、米を入手する人が増えている。新米の流通で9月上旬までの品薄感は解消されてきたものの、値上がりや頻発する災害に備えようと、自治体への寄付を通じて早めに確保しようとする動きが強まっている。(砂本紅年)

◆「品質は期待」新米の勢いは続くが…

 米がふるさと納税の主力品目となっている新潟県魚沼市。都市部で米が品薄になった「騒動」を反映して返礼品用の2023年産米は8月から9月上旬まで、寄付金額が前年比2倍となった。24年産米も勢いは続きそうで、新米の収穫シーズンを迎えた市担当者は「去年より出来がいいようで品質は期待を持てるが、需給関係の動向は心配」と話す。  国内最大級のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で、今年(1月1日〜9月19日)の米カテゴリーへの寄付額は、前年同期比で約1.4倍。新米が本格的に出回り始めた9月1〜10日は、端境期に当たる8月1〜10日と比べ約2倍と寄付の動きが加速している。

◆人気の「牛肉」を抜いて1位に

 米はもともと返礼品として人気が高いが、店頭での品薄感が広がってきた6月の寄付額は前年同月比1.7倍、7月は1.3倍、8月は2.1倍に達した。人気ランキングでは昨年、一昨年とも牛肉に次いで2位だった米が、今年上半期は1位に。災害時に活用できるパックごはんも、能登半島地震発生後の1〜3月と6月は同2倍以上だ。

コメの収穫風景

 運営元のトラストバンクが、9月1〜10日に「新米」と表記のつく返礼品の在庫量を確認したところ、前年同期比で4.5倍に増えた。担当者は「自治体も需要に応えて、米の供給を強化している」と話す。  別のふるさと納税サイト「ふるなび」で、米どころの新潟県産米の寄付件数をみると6〜8月に急拡大。このため8月までは品切れや準備中の自治体も目立ち、「新米予約」として対応する動きがあった。

◆「来年も再び品薄になる恐れがある」

 農林水産省によると、ふるさと納税返礼用の米の販売は徐々に増えており、昨年度は約3万4500トンと前年度比で26%増。ネット販売による約8万5000トンと合わせると、集荷業者を通じて取引される米の流通量の約4%となっている。今後増えていく可能性は高い。  元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「今年産の米価格が高い理由は、市場が今後の不足を予測しているため」とし、ふるさと納税を含めた米の「先食い」消費傾向が続くことで「来年も再び米が品薄になる恐れがある」と話している。 

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