内閣府が15日に公表した2024年4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価の影響を除く実質で前期比0.8%増、この成長が1年続いた場合の年率換算では3.1%増で、2四半期ぶりのプラス成長となった。(石井紀代美)  名目GDPの実額は、年換算で607兆円となり、15年9月に安倍晋三元首相が目標に掲げた600兆円を上回った。  認証不正の影響が薄らいだことで自動車生産が進み、個人消費や設備投資、輸出などGDPを構成する主要数値が回復した。  そのうち、個人消費は1.0%増と、5期ぶりのプラスとなった。自動車やエアコンなどの耐久財、衣服などが好調だった。自動車生産が進んだことで、民間企業の設備投資も2期ぶりのプラスとなり、0.9%増となった。  物価変動の影響を反映し、生活実感により近いとされる名目GDPは、前期比1.8%増、年率7.4%増だった。

◆記者解説 2四半期ぶりの背景に個人消費

 4〜6月期の実質GDP(国内総生産)成長率が2四半期ぶりにプラスとなったのは、全体の約6割を占める個人消費が5四半期ぶりに回復したためだ。だが、賃金上昇につながる持続的な回復とは言い切れず、本格的な経済成長の実現が新首相にとって大きな課題となる。(高田みのり)  個人消費の回復は、今年1〜3月期でGDPを押し下げていた自動車の認証不正問題の影響が和らいだためで、前期からの反動が一因となっている。春闘などを経た実質雇用者報酬(4〜6月期)の伸び率は11四半期ぶりのプラスとなったが、今後も持続的に賃金が伸びるかどうかが日本経済にとっての鍵だ。GDPの実額は名目で600兆円を突破したが、物価の影響を除く実質では558兆円しかなく、物価上昇が要因の可能性が大きい。

◆景気の先行きは?今後どうなる?

 景気の先行きに不安材料は少なくない。円安局面で業績を好調に伸ばしてきた輸出企業にとって、超円安から一転して円高傾向に動く為替相場が懸念される。また、日銀の追加利上げが行われ、中小企業を中心に資金調達や設備投資に苦慮すれば、賃金上昇にはマイナスの影響を及ぼしかねない。  今秋に控えるアメリカ大統領選の行方も気になる点だ。「アメリカ・ファースト」を掲げ、関税引き上げなどを公約に掲げるトランプ氏が当選すれば、日本への影響は避けられない。経済政策でも、日本の新首相の手腕が問われることになる。 

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