人事制度の改定について説明する南都銀行の橋本隆史頭取(11日、奈良市)

南都銀行は11日、人事制度を5年ぶりに改定したと発表した。年齢に関係なく実力に応じて役職に就くことができるようにし、30歳代でも支店長になることを可能にする。総合職と一般職を統合するなど制度を抜本的に見直すことで、新たな人材の獲得やつなぎ留めを目指す。

これまでは特定の役職を一定期間務めなければ次の役職に昇格することができなかった。たとえば、現在の最年少の支店長は44歳だが、支店長になるには20年程度かかっていた。新たな制度では30歳代でも支店長に昇格することができるようになる。

1日付で総合職に相当するプロフェッショナルコースと、一般職にあたるエキスパートコースをBP(ビジネスプロフェッショナル)コースへ統合した。法人営業など全ての業務を担当する総合職の9割は男性、窓口や個人営業などの一般職の9割は女性と男女比がいびつな状態だった。

従来はコースによって給与体系が異なっていたため、実質的に男女間で賃金差が生まれていた。橋本隆史頭取は11日の記者会見で、職種による性別の偏りを「過去の遺物」と表現。6月に創立90周年となるのを前に「過去を一掃して年齢や性別にとらわれることのない銀行として前へ進む。職員の処遇を改善して地域の活性化にも貢献する」と強調した。

他の業務を経験したい行員を募る「キャリアチャレンジ制度」も導入した。2023年12月に募集を始め、経営企画部門や人事部門などへの異動を希望する行員29人が集まった。そのうち24年4月1日付で9人をそれぞれの部署に配属した。

「管理職にならなければ給与が頭打ちになる」(角谷晴行常務執行役員)ことから、処遇は管理職と同等だが専門人材として活躍できる職種も設けた。多様な人材の獲得を狙い、退職した人を呼び戻す「アルムナイ(卒業生)」制度も導入した。退職者の専用サイトを開設し、4月中にも退職者に案内する方針だ。

シニア雇用はこれまで68歳までとしていた上限を70歳へ引き上げ、子ども手当は子ども(22歳まで)1人当たり月2万円から3万円へ増額した。リフレッシュ休暇や有給休暇の積立制度なども新設した。

橋本頭取は「就任以来、前例踏襲に縛られて変化を恐れる組織風土を変えるなど、意識改革を徹底してきた」と説明する。意識改革は「現時点でまだ6合目」とするが、人事制度の改定を通してさらに進めたい考えだ。

金融業界ではメガバンクが中途採用を強化するなど人材の獲得競争は激しさを増している。ある関西地銀のトップは「退職者のうち一定数はメガに流れている」と指摘する。南都銀の人事制度のてこ入れは、さらなる成長に向けた不可欠な施策とも言えるだろう。

(田村匠、高田哲生)

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