日銀の植田和男総裁は10日の衆院財務金融委員会で、黒田東彦前総裁が始めたマイナス金利政策などの異次元緩和について「結果としてデフレではない状況を作り出すことに大きく貢献した。暫定的ではあるがネットでプラスと評価している」と述べた。
9日の参院に続き、金融政策の概要を報告した。質疑のなかで11年間に及んだ異次元緩和への評価について問われた。
植田氏は「しっかりした分析は改めて示したい。とりあえずの感想」と前置きしたうえで評価した。「市場の機能や金融機関の収益に負の影響を及ぼしてきた可能性は否めない」とも指摘した。
金融政策上の長期金利の扱いについては「10年物国債の金利に関する目標を3月の金融政策決定会合で廃止したので基本的に金融市場において形成されると考えている」と話した。
一方で当面は長期国債の買い入れをこれまでと同規模で続ける。「乱暴な表現だが、急激にゼロにすると何が起こるかわからないと心配した。市場を観察する時期を経て、国債の買い入れを縮小する局面に移行できたらと考えている」と説明した。
日銀が保有する国債の残高は600兆円近くに及ぶ。植田氏は「中長期的には日銀がここまで大量の国債を持っているという姿は望ましくないと考えている」とも言及した。
長期金利が上昇すると国債の価格が下落し、日銀が保有する国債で評価損が発生するとの指摘がある。植田氏は「満期まで持てば元本で返ってくる性格のものだ」と答え、バランスシートの規模と財務の健全性の問題は直結しないとの認識を示した。
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