中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は25日、賃金の下限に当たる最低賃金(最賃)改定の目安額の議論を始めました。現在の全国加重平均(時給)は1004円で、7月下旬に中央審議会としての目安額をまとめます。審議が本格化するのを前に、最賃の仕組みや課題を整理しました。(畑間香織) Q 最賃とは何ですか。 A パートやアルバイトら雇用形態に関わらず原則全ての労働者に払われる賃金の下限です。最低賃金法に基づいて時給で示され、毎年度改定されます。最賃未満で労働者を働かせた企業と経営者には、罰金が科せられます。  改定の際は、労使と学者の代表者が審議会で、労働者の生計費と賃金上昇率、企業の支払い能力を考慮して引き上げ額の目安を夏ごろに示します。目安額を参考に都道府県の審議会が議論し、審議会の答申に基づいて都道府県労働局長が各地の最賃額を決めて、10月ごろに改定します。

◆東京は1113円、地域間で格差

Q 金額はどの程度で推移していますか。 A  2016年度以降はコロナ下の20年度を除くと、前年度比3%超の上昇が続いています。23年度は同4.47%上昇と現行制度になってから最大の上げ幅となり、全国加重平均は1000円を初めて超えました。最賃に近い水準で働く人は増えており、パートらの時給引き上げにも直結するため、物価高の中で審議の重要性は増しています。  地域別で最も高いのは東京都の1113円で、最も低い岩手県は893円です。800円台は今でも12県あり、地域間格差の是正は大きな課題の一つです。

◆「30年代半ばまでに1500円」

Q 今後も引き上げは続くのでしょうか。

最低賃金額(時給)の推移

A 岸田文雄首相は「30年代半ばまでに全国加重平均1500円を目指す」目標を掲げており、経済運営の指針「骨太の方針」でも「より早く達成できるよう」取り組むと明記。審議会に参加する労働組合中央組織の連合は、35年ごろまでには労働者の賃金の中央値の6割水準を目指し、1600~1900円程度に上げる目標を掲げます。  これに対し経営者団体は、日本商工会議所など中小企業4団体が連名で4月、国に最賃の要望を提出。「ある程度の引き上げは必要」としつつ「中小企業・小規模事業者の経営や地域経済に与える影響に十分注視が必要」と慎重な姿勢です。審議会では、経営者団体が引き上げをどの程度受け入れるかが鍵を握ります。 

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