鈴木俊一財務相は為替介入を示唆した=9日、国会内

東京外国為替市場の円相場は、市場が為替介入の防衛ラインとみてきた1ドル=152円を突破した。週明け15日午前は1ドル=153円台前半で取引が始まり、円安に歯止めがかからない状況だ。各国当局が通貨を売買する為替介入は他国経済にも影響を及ぼすだけに、日米首脳会談に向け、岸田文雄首相が日本を離れた8日から7日間は米国への配慮からか介入を控えたともみられる。市場では〝1ドル=155円〟が新たな防衛ラインと見る向きが強まるが、政府・日本銀行は投機的な円取引防止に向け、市場の裏をかこうと介入のタイミングを探っているようだ。

中東リスクで152円台での介入可能性も

現在のドル高・円安の進行は、金利が高止まりする米国と上がらない日本との金利差を意識し、円を売って運用に有利なドルを買うといった投機的な要因が強い。ここに来て円安がさらに進んだのは、10日に発表された米国の3月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回って上昇し、米国は物価を抑えるために現在の金利水準を維持するとの見方が広がったためだ。

とはいえ、昨年秋から越えられなかった「1ドル=151円」の壁を突破したことで、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「為替介入の準備はされているとみてよい」と強調する。

政府・日銀は直近で1ドル=145円を超えた令和4年9月22日を皮切りに、150円を突破した10月21日、24日に総額9兆円を超える円買いドル売りの為替介入を実施している。現在よりも高い水準で介入が行われた理由について、木内氏は「当時は原油価格が1バレル=130ドル近くと現在の水準(1バレル=80ドル台)に比べても急激に上昇しており、円安による物価高への警戒感も強まっていた」と説明する。

ただ、ここに来てイランとイスラエルの対立激化など中東の政情不安で原油価格が高騰する懸念もあり、木内氏は「1ドル=155円を待たずして152~153円台で介入する可能性もある」とみる。

変動率みると介入可能性低い?

為替介入のひとつの指標となるのが、為替の変動度合い(変動率)を示す「ボラティリティ」だ。鈴木俊一財務相が介入に関する記者や議員からの質問の回答で多用する「過度な変動」とは、この変動率を指している。

これに着目すると、介入を実施した際は高い変動率を示している結果があるという。三井住友DSアセットマネジメントの調べによると、4年9月15日からの1週間の変動率は17・0%、10月21日からは19・5%だった。同社の市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「介入の実施は変動率15~20%がひとつの目安となる」と指摘する。

市川氏によると、直近の予想変動率は4月17日から1週間で8・35%で、「現状では介入する可能性は低いとみている」と分析。「市場の思惑通りに介入すると投機筋が円売りを加速させるため、その効果は薄くなる。そうならないよう、市場の裏をかくタイミングで介入するだろう」と予測する。(西村利也)

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