アメリカの議会で演説した岸田首相。為替介入は15日以降、いつあってもおかしくない(写真:ブルームバーグ)

誰もが知っていることだが、アメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)は、6週間おきに年8回、定期的に開催される。

今年はすでに2回開催されたので、あと6回残っている。すなわち、4月30日~5月1日、6月11日~12日、7月30日~31日、9月17日~18日、11月6日~7日、12月17日~18日だ。

当初の利下げは6月のFOMCだった

1月の1回目の結果は予想どおり金利据え置きだった。だが、声明文に早期の利下げをけん制する文言が盛り込まれたため、直後のNYダウは317ドル安、ナスダックに至っては345ポイント安と急落した。

次の3月の第2回目では、2024年10~12月期の実質GDP成長見通しが大幅に引き上げられた。ジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長が会合後の記者会見で、インフレの鈍化についても「十分な進展が続く」と強調した。

そのため、NYダウは401ドル高、ナスダックも202ポイント高と買われた。この段階で、市場では0.25%幅で年内3回の利下げシナリオが確実視され、最初の利下げは6月11日~12日のFOMCだというのが市場のコンセンサスになった。

しかし、その後の景気指標が強めに出ているため、そのシナリオは揺れている。特に先週水曜日にでた3月のCPIは前年同月比+3.5%と、予想の+3.4%や2月の+3.2%を上回った。さらにコア指数も前月比・前年同月比とも、低下予想に反し2月と同水準だった。

ここで6月の利下げ観測は後退し、この日の10年債利回りは4.5%台半ばに、1ドル=153円までドル高が進み、NYダウは422ドル安、ナスダックも136ポイント安と売られた。

当然のことだが、ソフトランディングに成功したと言われるアメリカ経済が、本物であればあるほど物価指数は下がりにくい。先週末のサンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁やカンザスシティー連銀のジェフリー・シュミッド総裁の発言にあるように、FRBは現時点で利下げを急ぐ必要はないということになり、NYダウは475ドル安(一時580ドル安)、ナスダックも267ポイント安と、米国株は波乱含みになっている。

今の日本株安はインフレ相場以降への「一時的な痛み」

日経平均株価も、4月に入ってからここまでの高安合計は845円安となっており、直近の先物は3万9000円を割れている。強気筋にも若干の動揺が見られるが、相場の本質が変わったとは思えない。

ここでの調整はデフレ脱却相場からインフレ相場に移行する時の成長痛であり、波乱はその薬になるとの筆者の相場観も全く変わっていない。「この大相場、下がったら買えばいいだけ」との考えも変わらない。買う資金が残っていない投資家は、十分に買ったということであり、決して悪いことではない。

一方、この間岸田文雄首相は、8日から国賓としてアメリカを公式訪問し、日米首脳会談だけでなく、上下両院合同会議で日本の首相として安倍晋三氏以来9年ぶり2人目となる演説を行い、14日に帰国した。

この間のドル円相場は、CPI(消費者物価指数)の予想以上の強さによる利下げ先送りという材料も手伝って、34年ぶりの予想以上に円安が進んだ。

市場はこれまで、為替介入ラインは1ドル=152円にあるとみてきたが、結局153円になっても日本の介入はなかった。「首相が国賓での訪米期間中に為替介入はない」というのがもっぱらの噂だったが、この噂に真実味があるとしたら、帰国後介入(つまり15日から)の可能性が高い。トヨタ自動車の株価が先週末、円安の中でも伸び悩んだのは、このあたりを警戒したのかもしれない。

日経平均は、経験則で言うと、企業活動が低調になる3月に押し目をつくることが多い。だが、今年は3月22日が史上最高値更新日となった。

もっともその後は3月月末まで約500円下げ、調整は4月に入ってからも続いている。このことから考えると、2024年前半相場の押し目は、3月から4月になった可能性がある。

ということは、今後の相場の当面のヤマ場は、3月期を本決算とする企業の決算ラッシュが来る5月の連休前後前後、ということになる。特に2025年3月期の業績に大きな影響を与える為替見通しがカギを握るのは、言うまでもない。

インフレ相場はまだ始まったばかりだ

そこでドル円の推移を改めてみると、2022年の年間平均レートが1ドル=131円50銭で、2023年の平均は140円だったため、日本企業に大きな円安メリットを与えた。

現在、2024年の平均レートはいくらか。日本の証券大手3社の予想では1ドル=145円で、2024年の円安メリットは2023年より減ることが考えられる。しかし、このままもし150円台が続くと、日本企業は2024年度も、2023年以上の円安メリットを得ることになる。果たして、本当に円安メリットは継続するのか。首相帰国後の介入次第だが、いったんどこまで円高になるのか、重要なときに差しかかっている。

今週はアメリカ側に注目企業が多いが、一方で日本は来週23日のニデックまで、注目企業の決算はない。ニデックの永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)が2024年度の為替をどう読むのか興味津々だが、今週ばかりは日経平均は材料不足で弱含みにならざるをえないかもしれない。

とにかく、日経平均は2024年に入ってから3月22日の4万0888円まで20%以上の急騰劇を演じたが、それでも3カ月の時間を要している。デフレ脱却相場からインフレ相場に、さらにいずれはバブル相場へと発展していく大相場は始まったばかりだ。1カ月や2カ月のモミ合いはあった方がいい。次はニデックの決算待ち、と言ってもあと1週間にすぎない。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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