【北京=三塚聖平】米国がアジア太平洋地域で日本などと連携して「対中包囲網」の強化、拡大を図ろうとしていると警戒する中国は圧力に対抗するため、欧州各国との関係強化に動いている。11月の米大統領選でトランプ前大統領が返り咲けば、米欧関係に亀裂が生じる可能性も計算に入れているとみられる。
包囲網から切り離そうと躍起
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は11日、日米首脳会談に関して「米国は世界の覇権を守るために、中国を押さえ込む意図をますます隠そうとしなくなっている」と指摘した。
政府系シンクタンク、中国社会科学院の米国問題専門家である呂祥氏は同紙に、米国が中国を孤立させるために「日本を強制的に束縛し、さらにはアジア太平洋地域の多くの国までも束縛しようとしている」との見方を示した。
米主導の対中包囲網が北大西洋条約機構(NATO)のような強固な同盟システムにつながりかねないと中国は懸念。
ロシアやグローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)といった親密な国々との関係固めに加え、欧州各国を包囲網から切り離そうと躍起だ。習近平国家主席は14~16日に訪中するドイツのショルツ首相と会談し、習氏自身も今年初の外遊として今春にフランスを訪れる見通しが伝わっている。
トランプ氏再登板なら米欧関係は…
3月にはオランダのルッテ首相が訪中し、会談で習氏は「デカップリング(切り離し)に活路はない」と述べるとともに「欧州を多極化世界の重要な一極、協力のパートナーとみている」と呼び掛けた。
香港英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)が3月に掲載した米国の研究者の論評は米中関係の「負の連鎖」は現在ある程度止まっているが、中国側は「表面的な関与以上の米国との建設的な関係は維持できないと確信しているようだ」と指摘。欧州との関係が「二極化する世界でグローバルパートナーを探す中国にとって極めて重要だ」と分析した。
北京の外交筋は「トランプ氏の再登板となれば米欧関係が不安定になる可能性も見越し、中国は欧州との関係再構築を急いでいる」とみる。むしろ米国を国際的に孤立させることも視野に外交攻勢をかけているとの見方もある。
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