記者会見で決算について説明するめぶきフィナンシャルグループの秋野哲也社長(左)と清水和幸副社長(10日、水戸市)

北関東を地盤とする地方銀行5行・グループの2024年3月期連結決算が出そろった。貸し出し増による利息収入の拡大などを背景に3行・グループで純利益が増えた。25年3月期は4行・グループが純利益の増益を予想している。

前期は常陽銀行と足利銀行を傘下に持つめぶきフィナンシャルグループ(FG)、群馬銀行、筑波銀行が前の期と比べて連結純利益を伸ばした。

めぶきFGは貸し出し増による利息収入の拡大や信用コストの低下が連結純利益を押し上げた。預貸金利息差と手数料収益から経費を差し引いた対顧サービス利益は16年に常陽、足利の2行が経営統合して以来の最高を4年連続で更新。国内貸出金利息収入は経営統合以降、初めて増加に転じた。

群馬銀行の深井頭取は倒産の増加に関して「注視する必要がある」と語った(9日、前橋市)

連結純利益が8年ぶりに過去最高になった群馬銀行も貸出金が順調に増え、利息収入が増加。協調融資やM&A(合併・買収)支援など法人向けの手数料収入を含む非金利業務利益も前の期比15%増の242億円と過去最高となり、全体の収益を押し上げた。

筑波銀行は原材料コスト上昇や人手不足に悩む中小企業の資金繰り支援の貸し出しが伸びた。つくばエクスプレス(TX)沿線開発に伴う住宅ローンなど個人向け貸し出しも前の期比9%増の5402億円と好調。貸出金利の下げ止まりもあり業績を支えた。

東和銀行はビジネスマッチングなどの手数料収入の堅調で役務取引等利益が7%増の27億円だった。信用コストも19%減の23億円に抑えたが、有価証券利息配当金が減った影響を補いきれず連結純利益が減少した。

記者会見する栃木銀行の黒本淳之介頭取(10日、宇都宮市の本店)

栃木銀行は大口の融資先に対する貸倒引当金の計上などで与信コストが37%増の36億円と膨らんだことが響き、前期は最終減益だった。

24年3月期決算を説明する東和銀行の江原頭取(9日、前橋市)

25年3月期は東和銀以外が連結純利益の増加を予想する。

2年連続の最終増益を見込むめぶきFGの秋野哲也社長は「貸出金残高の増加に加え、市場金利上昇を反映した貸出金利回りの引き上げにより貸出金利息の増強に取り組む」と強調する。

為替動向の影響に関しでは清水和幸副社長が「地元には円安が進むと厳しくなる傾向がある内需型の企業が多く、業況を見ながら適正な支援が必要」と説明した。

群馬銀行は連結純利益で2年連続の最高更新を見込む。政策金利は今期中に0.25%に引き上げられると想定。深井彰彦頭取は「(連動して)貸出金利がすぐに上がるわけではないが、資金利益も伸ばしていかなければならない。顧客の課題に幅広い解決策を考えていき、融資業務と非金利業務の両面で収益源を増やす」と話した。

与信費用は前期比約3倍の34億円を見込む。深井頭取は「倒産件数は増えており、注視していかなければならない」と警戒感も示した。

筑波銀行の生田頭取は「本業の収益の中身はよくなっている」と述べた(10日、つくば市)

筑波銀行も2年連続の連結純利益増を見込む。生田雅彦頭取は「前期は大口与信先に対する貸倒引当金計上で純利益が当初予想を下回ったが、本業の収益の中身はよくなっている」と強調。「与信管理を徹底し、業績回復を図る」と述べた。

栃木銀行は連結純利益の増益を見込む。ゼロゼロ融資の返済開始などで足元では倒産件数は増えてきているが、「貸倒実績率の低下や過去に積んだ引当金の戻し入れで、前期と比較すると与信コストは低下する」とみている。

6月27日付で新頭取に就く仲田裕之常務は「これまで注力してきた事業者の課題解決や資産形成支援の取り組みをグループ一体で強化し、地域経済の発展に全力を尽くしながら当行の収益力も向上させていく」と意気込みを語った。

東和銀行は今期も連結純利益の減少を予想する。江原洋頭取は理由について「セミセルフレジの導入などデジタル化に向けた投資を進める。信用コストも大きめにみている」と説明した。

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